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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十三章―逆賊たちの持論―#8
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ました。
だけど、あるとき気づいたのです。私は、仕事に留まらず────人格や言動すら、観察していた使用人を真似ていることに」
エデルは、聴いている者の心情など気にする様子もなく、ただ語り続ける。
「そして────根幹であるはずの自分の人格というものがないことに気づいたんです」
「人格がないとは────どういうことだ?」
「私は自分の在り方というものが判らないし────感情はないわけではないが────とても薄い。
自分がやろうとしていることが危険だと判っているのに────やめた方がいいと思うだけで、やめようという気が起きないんです。
エルが私に親身になってくれていることは知っています。心配させたことは悪かったとは思いましたが────それだけです。だから、今度からしないようにしようとまでは思わない」
その状態は────ルガレドにも理解できた。
この8年の間に行かされた5回の遠征で、ルガレドはまさにそんな感じだった。自分が携えている武具が劣悪なものであることは解ってはいたが、さして危機感など抱くことなく、魔獣に挑んでいた。
無事だったのは────
単
(
ひとえ
)
に膨大な魔力のおかげだっただけだと、今なら解る。
「自分の人格がない私は、場面によって態度や言動が替わるので、同僚や雇い主に気味悪がられていました。そんなとき、ゾアブラの息子であるザグレブに出会って────劇団に誘われたんです。
普通なら悪い方に捉えられることの多い“演じる”という行為は───演劇でなら評価される。公演の合間に演じる人格を一つに定めておけば、皆はそれが私の素だと思い込み、誰も私の存在を訝しく思わないことを私は学習しました」
「…………」
「ザグレブが皇妃に連れて行かれ、ゾアブラが劇団を解散した後は───観察したことのない職業や人格を求めて転々としました。途中、何度か劇団で俳優を務め───その公演を見ていたらしいウォイドさんから劇団に誘われ、私はまた俳優業に戻りました。そうして────リゼさんと出逢ったんです」
それまで淡々としていたエデルの顔に、初めて笑みのようなものが浮かぶ。
「私は、初め、リゼさんはザグレブと同じ人種だと思っていました。お人好しで誰彼構わず、助ける────そう思っていました。だけど────違った。
盗賊団に潜り込んでリゼさんに助けられたとき、私は当然のように、リゼさんは盗賊とはいえ人を殺すことはできないと考えていたんです。でも、リゼさんは盗賊に容赦はしなかった。
意外に思い────私は訊ねました。すると、リゼさんはこう答えました。
『このまま殺すのを躊躇って逃がしたりしたら、また人を殺めたり、他人の大事なものを奪うかもしれない。私には、盗賊の命より、これから殺されるかもしれない人
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