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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十三章―逆賊たちの持論―#8
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控えると────ルガレドが、おもむろに口を開いた。

「さて────エデル。呼ばれた用件は判っているな?」
「ええ、勿論です」

 普通なら尻込みしそうな物々しい雰囲気に動じることなく────口元に笑みを浮かべて、エデルは応える。

「お前…、一体どういうつもりだ?わざとリゼに心配させるような真似をして────何がしたい?」

「別に何か企んでいるわけではありませんよ。私は、このまま───劇団に戻らず、リゼさんに仕えたいだけです」

 エデルの言葉に、ルガレドは眉を顰める。

「リゼに仕えたい───だと?」
「そうです」
「それは────どういった理由でだ?」

 ルガレドだけでなく、ジグやレナス────後ろにいるラムルまでも、剣呑な気配を放つ。

 その顕著な空気を感じ取っているだろうに、エデルはやはり動じない。

「私の本名は───イーデル=ファイ=グルワイト。アルドネ王国のグルワイト公爵家の長男として生まれました」

 エデルの答えはルガレドの求めたものではなかったが、ルガレドはエデルが語り始めた出自が答えに繋がるのだろうと、止めることなく先を促す。

「それが、何故こんな───流れ者のような生活を?」

「私は────“忌み子”だったんです」

「“忌み子”?」

「ええ。三つの月が同時に昇る日に生まれたという────それだけの理由で、私は忌むべき子だと定められました。
“忌み子”だった私は────両親や弟妹にとって家族ではなく、使用人にとって主ではなかった。それどころか───まるで存在していないかのように扱われた。殺されることはなかったし、最低限の世話はされていましたが───声をかけても聴こえない振りをされ、目を合わせることさえ厭われた」

 エデルは感情を交えず、淡々とした口調で語る。

 この男は役者だ────ラムルでさえ感心するほどの。だけど、今語った話は事実だとルガレドは直感した。

 念のため、神眼で視てみたが、エデルは嘘を()いている様子はない。

「私は、誰と言葉を交わすこともなく───情を交わすこともなく、公爵家にいる人間を観察することで、言葉を覚え、常識を覚え、振る舞いを覚え───育ちました」

 エデルは何ということもないように語っているが────リゼラと出逢う前までの自分の生活が思い出され、ルガレドは身につまされる思いだった。

 しかし────ルガレドには、母や祖父、それにラムルやカデアに愛された思い出が胸にあった。

 エデルには…、それすらも────いや、何もなかったのだろう。

「ある程度育つと、私はグルワイト公爵家を出ました。公爵一家だけでなく使用人も隈なく観察していた私は、どんな仕事に就いても初めから熟すことができ
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