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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十三章―逆賊たちの持論―#2
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 レムトさんは、私の意図を悟ったようで頷くと、深く息を吸い込んだ。そして────思いきり叫ぶ。

「誰かああああああ、助けてえええええ!殺されるうううううう!」

 さすが俳優────相変わらずの大音声だ。ちょっと耳が痛い。

 慌てたのは、目の前にいる三人の男たちだ。護衛の男たちは、小太りの男を立たせて、そのまま腕を引っ張って走り出す。

 追おうとした私に、レムトさんが縋りついた。

「ま、待ってくれ!一人にしないでくれ…っ!」
「えっ、でも…!」

 二人の護衛のうち───走りながらこちらを窺っていた男が、それを見て逃げる好機と思ったらしく、前を向いて先を逃げる男たちに発破をかけ、三人は本格的に走り出した。

 三人の姿が路地に消える。
 向かった先は────貴族街だ。

≪レド様───【千里眼】で、あの男たちの行く先を見届けてくださいませんか?≫

 レド様が視ておいてくだされば、あの男たちが何処に逃げ込んだのか、後でレド様の記憶から確認できる。

≪解った≫

 レド様が頷いてくれたので、私に縋りついたままのレムトさんに向き直った。

「もういいですよ、レムトさん」

 私が告げると、レムトさんは怯えた表情をスッと落とし────私から手を放した。

「助かりました、リゼさん」
「いえ。通りかかって良かったです。あの男は誰ですか?どうして、レムトさんを殺そうと────?」
「それが…、よく解らないんですよね。あの人は、私が前にいた劇団の団長なんですが…」

 レムトさんは、本当に解らないらしく、困惑気味に首を傾げる。

「では、順を追って話してくれますか。まず、何故ここに?」

 ここは、貴族街に隣接する───裕福な商人や皇宮勤めの官吏などが住むエリアだ。劇団員のレムトさんが、用があるとは思えなかった。

「ここには、今借り受けている劇場のオーナーを訪ねに来たんです。ウォイド団長に頼まれましてね。今はその帰りです」

「そこで───あの男に、ばったり会ったと?」
「ええ。ちょっと雰囲気は変わってましたけどね。お世話になった劇団の団長です、すぐに判りました。懐かしくなって声をかけたんです。そうしたら、あちらも懐かしがってくれましてね、何処かでお茶でも飲みながら、ゆっくり話そうと言うもんですから────少しくらいならいいかと思って、ついていったんです」

「そして、殺されそうになった────と?」
「はい」

 【心眼(インサイト・アイズ)】で視ても、レムトさんは嘘は吐いていないようだ。

「あの男の素性はどういったものなんですか?」
「あの人は、名をゾアブラといいまして───小さな劇団を率いていました。ですが…、もう19年前になりますか──
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