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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十三章―逆賊たちの持論―#1
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主の住居は、割と裕福な商人や皇宮勤めの官吏などが多く住むエリアにあった。立ち並ぶ家々も、豪邸とまではいかなくても、それなりに大きい戸建てばかりだ。

「ここだな…」
「ええ…」
「これは────改善される前の…、俺の邸を彷彿とさせるな」
「そうですね…」

 つまり───長い間、手入れも補修もされていないボロ家だということだ。

 家自体は、テラスを有した石造りの二階建てで、煙突とか屋根裏部屋の窓があるところとか、きちんと手入れされていれば、かなり素敵な雰囲気なのに────ああ、勿体ない。

 ちなみに、そこそこ広い庭は、伸びきった草がびっしりと覆っている。

「とにかく、訪ねてみよう」

 レド様は、周囲を確認してから、念のためにかけていた【認識妨害(ジャミング)】を解くと───玄関ポーチに乗り上げ、ドアノッカーを鳴らした。

「誰だ?」

 中から、しゃがれた声が返された。少し離れたところにいるらしく、叫び声に近い。

「依頼を受けて、冒険者ギルドより来た者だ」
「そうか。それなら、入ってくれ。鍵は開いとる」

 不用心な気がしたけれど、歩けないのなら仕方がないのかな。

「失礼する」
「失礼します」

 レド様と私は、一応、そう断ってから、中に踏み込んだ。「こっちだ」と呼ぶ声がする方へと、向かう。

 中は、外装よりはマシという程度で、壁紙は汚れている上に、あちこち剥がれかけている。床の隅には、所々に(ほこり)が溜まっていた。


 リビングルームらしき部屋に入ると、声の主と思われる老人が、部屋の真ん中に置かれた一人用のソファに座っていた。

 老人は、顔に深く皺が幾つも刻まれていて、気難しげに見えた。

 頭頂部だけ禿げ上がっており、後頭部には癖が強くてまるで綿のような白髪が残っている。何だか、前世のフィクションに出てきた“マッドサイエンティスト”みたいだ。

 身なりは、黄ばんだ白シャツに草臥(くたび)れた黒いスラックスと───この家の規模には合っていないけど、この荒れ果てた状態には合っている、そんな感じだ。

 老人は、やはり片足をケガしているようで、右足のスラックスを膝まで捲り上げ、足には包帯を巻いている。

 オットマンは所持していないのか、木箱に貴重なものであるはずの本を幾つか載せ、その上に右足を横たわらせていた。

 念のため、【心眼(インサイト・アイズ)】で確認してみると───しかめっ面と言っていい表情をしているけど、根は良い人みたいだ。 

「よく来てくれた。まさか、この依頼を受けてくれる者がいるとはな。どうせ誰も受けないだろうと思いながらも───昨日、買い物を引き受けてくれた小僧に、ダメ元で依頼させたんだが…」

 ダメ元だ
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