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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十二章―明かされる因縁―#8
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「何を言っている?これは───ジェスレム皇子の皇子邸で起こったことで、ファミラが壊したのはジェミナ皇妃の私物だぞ?リゼラは、ルガレド皇子の皇子邸で暮らしていて、携わる機会などない。リゼラが関係しているはずがないだろう?」

「それなら───リゼラが忍び込んで、ファミラを貶めるために仕出かしたに違いありませんわ」
「ジェスレム皇子の邸は、ベイラリオ侯爵家が厳戒態勢を敷いている。入り込むのは容易ではないし────そもそも、リゼラが何故そこまでする必要がある?」
「決まっていますわ!アレは無能ですもの。昔から有能なファミラを妬んでいましたし───自分は零落(おちぶ)れた皇子の親衛騎士にしかなれなかったのに、ファミラが次期皇王であるジェスレム皇子の親衛騎士になったのを羨んでいるんですわ」

 再び皇都を離れる前に、ダズロがあんなに言い聞かせたはずなのに───レミラは、そんなことなど忘れてしまったかのように、持論にしがみつく。

「レミラ───言ったはずだ。リゼラが、ファミラを妬むなどありえない。リゼラの実力は、ファミラなど足元にも及ばないんだ。すでに冒険者として成功しているし、ジェスレム皇子の親衛騎士となることなど羨むはずがない。大体、お前もファミラも、リゼラとは会っていないのに、どうして妬んでいるなどと判るんだ」

「それは───判りますわ。あの契約の儀の朝だって、妬ましそうに、わたくしたちを見ていたではありませんか」
「お前には、あれが────妬まし気に見えたのか…」

 ダズロには───あのときのリゼラは、これから向かう場に相応しくないレミラとファミラの派手な格好を目にして、心底から呆れていただけのように見えた。

 ダズロでさえ、あの朝、準備を終えた二人を目に入れた瞬間、眩暈を覚えたほどだったから、リゼラが呆れたとしてもおかしくなかった。


(人間は自分を通してしか物事を測れないというのは、本当だな────)

 あの後、ダズロがどんなに言葉を尽くしても、レミラはリゼラの仕業だと言って譲らなかった。

 どうしようもなく気疲れを感じたのは───『リゼラがファミラを妬んでいる』という見解を、レミラは苦し紛れに言っているのではなく、本気でそう信じ込んでいることだった。

 レミラはこの10年間、リゼラに一度も会っていないと報告を受けている。

 それなのに、頑なにそう信じているのは、おそらく、リゼラに自分を重ねているからなのだろう。すなわち────妹を羨んでいた自分に。


 そう───レミラは、冷遇された過去を克服などしてはいなかった。

 調べた結果───当時、社交界で囁かれていた『生家で虐げられているレミラが、その逆境を糧にマナーと教養を磨き上げた』という噂は、噂でしかなかった。


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