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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十二章―明かされる因縁―#8
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アン・ガラマゼラに目配せすると、ビゲラブナ伯爵の派手さばかりが目立つ悪趣味な執務室を後にした。
「久しぶりだな、ウォレム」
騎士団の詰め所に設えられた自分の執務室に戻ると、ダズロはついて来たウォレムに応接スペースのソファを勧め、そう切り出した。
ダズロの側近で補佐官でもあるセロムが、すかさずお茶を淹れに、その場を離れる。
「ああ。一月半振りくらいか」
ダズロはこの皇都に昨日戻って来たばかり───ウォレムに至ってはつい先程着いたばかりのようだ。
ウォレムは体格が良く、そこらの若い騎士などよりも余程体力があるが、その厳つく角ばった顔には、やはり移動疲れが色濃く出ていた。
「お互い、気苦労ばかりが続く。今度は、バカどもの護衛と来たもんだ。あいつらなどより、よっぽど護衛したい───まともな貴族たちは自分の騎士を伴って上京するというのにな」
「そうだな」
ダズロは心底から嫌そうに────帰り際、ビゲラブナ伯爵の補佐官に渡された“護衛すべき愛国の徒である貴族”とやらのリストに、眼を遣る。
ダズロの本心としては、大事な部下をそんな連中に関わらせるなど冗談ではなく───皇都に来る途中、野盗にでも魔獣にでも勝手に襲われてしまえと思わないでもなかったが、命じられてしまったからには従わないわけにはいかない。
従わなかったら、それを理由に更迭される恐れがあるからだ。
お茶を淹れて来たセロムを交え、ダズロとウォレムの共に皇都に戻って来た部隊を、リストに記載されている貴族たちに割り当てていった。
割り当てをし終えて────ダズロとウォレムの交わす会話は、お互いの近況に話題が移った。
「…ファミラ嬢の様子はどうだ?」
「……昨日、邸に帰ったら───ファミラが“ガドマ共和国から取り寄せた逸品のカップ”を壊したとかで、苦情と共に皇宮から届いたらしい───弁償を求める旨の文書を見せられた」
ダズロは、沈痛な面持ちで、ウォレムに報告する。昨日の───その文書を見せられた際の妻であるレミラの言動を思い出し、ダズロの表情はさらに陰る。
レミラは、ファミラがジェスレム皇子の反感を買ったとは信じたくないようで────憤懣やるかたないという風情で、久しぶりに戻ったダズロを労うこともなく、その文書をダズロに突きつけ、怒りを湛えた声音で言い募った。
「これは、リゼラの仕業に違いないですわ!」
「……は?」
突きつけられた文書を読んでいたダズロは、レミラが何を言っているのか理解できなかった。
「ファミラが───あの子が、こんなことをするはずがありません!絶対に、リゼラの仕業ですわ!アレが、自分で仕出かしたことを、ファミラのせいにしたに違いないですわ!」
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