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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十二章―明かされる因縁―#8
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保っていられるのは、このレーウェンエルダ皇国が大国だからに過ぎない。

 だが、それも────いつまで保つか。

 その役に立たない騎士団や領軍を抱える無能な領主どもが、自分たちで何とかしようという努力もしないまま、やれ国境に敵が現れただの、領地に魔獣が現れたなどと、この下種に訴え出るたびに───ダズロ率いる“虧月(きげつ)騎士団”と、ダズロと意志を同じくする騎士が率いる“偃月(えんげつ)騎士団”が駆り出されているのだ。

 ビゲラブナ伯爵の言う“魔物や魔獣など相手にすべきではない誇り高き騎士”とは、ベイラリオ侯爵家の息のかかった者が統べる“彎月(わんげつ)騎士団”だけのようで────駆り出されるのは、いつだって虧月騎士団と偃月騎士団のみだ。


 それでも───すべての貴族領の援護要請を受けているのなら、まだいい。

 この下種は、ベイラリオ侯爵家門や傘下の貴族からしか、援護要請を受け付けない。

 現在、護国を司るはずの三つの騎士団は、この下種のせいで、ベイラリオ侯爵家の私兵に成り下がってしまっていた。

 しかも、虧月騎士団や偃月騎士団の成したことは、すべて彎月騎士団と無能な領主どもの功績となっていて────その上、この下種は、虧月騎士団と偃月騎士団はまるで何もしていないかのように、『皇都でふんぞり返って何もしない烏合の衆』だと言い触れ回っているのだ。

「お言葉だが、何もせず楽をしてふんぞり返っているのは、貴殿と彎月騎士団だけでは?我々虧月騎士団と偃月騎士団は、“エリアエイナ地帯”を護るために、今も大半の騎士と兵士たちを駐在させたままだ」

 ダズロたち騎士団上層部と騎士の一部だけが、辞令式のために皇都に一時的に戻って来たに過ぎない。

 ビゲラブナ伯爵のような下種には、正論が一番堪えると見え───怒りに血の気が上ったのか、その醜い顔を真っ赤にしたかと思うと、さらに醜く顔を歪ませた。

「大臣である私に、口答えするな!お前らに断る権利などない!犬のように黙って従えばいいんだ!とにかく、この方たちを迎えに行け!いいな!」

 唾を汚く飛ばしながら、そう言い捨てると───ビゲラブナ伯爵は、ダズロの返答など待たず、補佐官をそのままに護衛だけ引き連れて、足音も荒く自分の執務室を出て行った。

 ダズロの無礼に気分を害されたなどと言い訳をして、その後の執務を投げ出すつもりなのだろう。元より、常日頃から、きちんと執務を行っているとは到底思えないが。

 まあ、だが、出て行ってくれたのは良かった。あれ以上、会話を交わしていたら、さすがに殴り掛かってしまっていたかもしれない。

 ダズロは、共に呼び出されていた、ダズロの同期の騎士であり、気の置けない友人でもある───“偃月騎士団”を統べるウォレム=
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