暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十二章―明かされる因縁―#5
[6/6]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話

「先程は───危ういところをご助力いただき、誠に感謝いたします」
「いや。今回の魔獣は、異例だった。あれが通常の魔獣なら、俺たちの助力は必要なかっただろう」
「有難きお言葉、痛み入ります」

 この物腰からも、レド様を見知っていることからしても、少なくともこの隊長らしき騎士は貴族の出に違いない。

「今日はご苦労だった。民のためにその力を振るったこと────称賛に値する。これからも、民のために尽力してほしい。俺からはそれだけだ」

 レド様が締めの言葉を告げ、解散を促す。けれど、隊長らしき騎士は何も言わず、騎士たちは(こうべ)を垂れたままで、誰一人動き出さない。

「……まだ何かあるのか?」
「その…、お忙しいところを恐縮でありますが────何卒、お時間をいただけないでしょうか…」

 先程の儀礼的な遣り取りとは違い、騎士の声音に感情が混じる。

 その声に────喋り方に、聞き覚えがある気がして、ざわり、と何かが掻き立てられた。

「私の話を聴いていただきたいのです────ファルリエム子爵に」

「リゼに────だと…?」

 レド様の声音が、低く───凍てついたものに変わる。

「一体、何のつもりだ…?リゼが───ファルリエム子爵が…、俺の婚約者と知った上で言っているのか?」

 騎士はレド様の怒りに怯んだのか、一瞬だけ躊躇する素振りを見せたが、その兜に両手をかけた。兜が脱げていくにつれ────徐々にその容貌が明らかになる。

 汗に濡れたアーシャより赤味の強い朱金の髪に───レド様のピンブローチの蒼鋼玉(サファイア)のような蒼い双眸。整った顔立ちは、繊細ながら精悍な印象を受ける。

 それは────見知った顔だった。いや…、見知ったどころではない。何度も間近で相対し────言葉を交わした…、いや、私を罵ってきた────

「…っ」

 兜を脱いだその男は…、イルノラド公爵公子ファルロ────私を出来損ないと呼ぶ、血を分けた実の兄だった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ