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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十二章―明かされる因縁―#2
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「…オレ、は────」

 ハルド君は、苦し気に言葉をそれだけ漏らすと───イスを倒して立ち上がり、身を翻した。そして、ダイニングルームを出て行く。

 ラムルが後を追おうとしたのを、私は止めた。

 ハルド君は、レド様の侍従で───ラムルの部下だ。ラムルが追うのが筋かもしれない。

 だけど────そのときは、私が行った方がいいような気がしたのだ。

「ラムル、私が行きます」

 そう言うと、ラムルは眼を見開いたが────すぐに、頷いた。

「リゼラ様が、そう仰るのであれば────その方が良いのでしょう」
「ありがとう、ラムル。────レド様、行ってきてもよろしいですか?」
「ああ…、ハルドを頼んだ」
「はい」

 私はレド様に断ると、立ち上がって、扉へ向かう。

「ジグ、ついて行け」
「は」

 レド様とジグの遣り取りが聞こえて、私は苦笑する。レド様は────本当に心配性だ。


◇◇◇


 【把握(グラスプ)】で探ると、ハルド君は地下調練場にいた。

 姿をくらませたジグを伴い、地下調練場に跳ぶと───ハルド君は、その広い空間に、ただ立ち(すく)んでいた。

「ハルド君」

 追って来たのが私だと判ると────ハルド君は、大きく眼を見開いた。

「な、んで────貴女が…」

 余程、意外だったようだ。

「オレのことなんて…、貴女は嫌いなはずなのに────」

 ハルド君の呟きに、私は眼を瞬かせる。私が────ハルド君を嫌い?

「私は、別にハルド君を嫌ったりはしていないけど────どうして、そう思うの?」
「……っだって────」

 ハルド君は、その先を続けられないようで───言葉を呑み込み、俯く。

「…ハルド君?」

 私が名を呼ぶと、ハルド君は、俯いたまま、躊躇いがちに口を開いた。

「ジジィが────ヴァルトが言っていた“兄貴”というのは…、オレの祖父なんだ────」

 やっぱり、ヴァルトさんとハルド君は、私の印象通り───血縁なんだ。

 ハルド君の祖父がヴァルトさんの兄ということは、ヴァルトさんはハルド君にとって大叔父ということになる。

「オレの祖父も…、父も、兄も───ヴァルトは、忠誠心もなくて…、うちの一族の出来損ないだと言っていた。オレも───ずっと、そう思ってた。だから───ディルカリド伯爵家にいたときは、ヴァルトのことは無視していた。会っても、話もしないし───挨拶すらしなかった」

 ハルド君は、一瞬、口を戦慄(わなな)かせてから────続ける。

「セレナ様のことだって───皆の言う通り、落ち零れだと思ってた。落ち零れだから───主だなんて思っていなかったし───侍女やメイ
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