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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十一章―ファルリエムの忘れ形見―#6
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せん。私が授かった神託は────両親の期待に添えるものではありませんでした」
感情を表さないよう、できる限り淡々と話そうとして────声音が硬くなっているのが、自分でも判った。
一旦言葉を切ったとき、ディンド卿が遮るように呟いた。
「まさか…、そんなことで冷遇したと───食事すら与えなかった、と…?実の────娘に?」
ディンド卿の声には、先程のか細かったものとは違い───力が入っていた。そして、拳を握り、ぶるぶる震えたかと思うと、次の瞬間────
「信じられん…!自分の娘だぞ…!?何でそんなことができるんだ!俺だって───エルの神託が『商人』で、ほんの少しがっかりはしたが───それでもエルが可愛い娘であることは変わりなかったのに…!食事を与えない…!?何て───何て親だ…!」
ディンド卿は、さっきまでの落ち込んでいた姿が嘘のように────怒りに塗れた表情でそう叫んだ。
私は、ディンド卿のあまりの変わりように、呆気にとられてしまった。
「リゼラ様!」
「は、はい」
「除籍など生ぬるい!そんな親、こちらから絶縁状を叩きつけてしまうべきだ!」
「あ、はい。私もそう思ったから、絶縁状を叩きつけました」
「よくやった!」
「ええと…、ありがとうございます?」
私が困惑しながらも答えると、ディンド卿は満足げに頷き───今度はレド様へと顔を向けた。
「ルガレド様」
「勿論、このまま────放っておきはしない。いずれ…、思い知らせてやるつもりだ」
レド様は、底冷えしそうな凍てついた眼で、当然のごとく答える。
「それでこそ、“ファルリエムの男”です───ルガレド様。男として生まれたならば…、大事な女は全力を以て護り抜き────大事な女が傷つけられたならば、持てる力を以て報復するべきだ。このディンド、微力ながら───助力させていただきます」
「それは────心強い。是非とも、リゼを護り抜くために力を貸して欲しい」
ディンド卿は表情を改めて引き締め───立ち上がってから、片膝をついて首を垂れる。
「この命尽きるまで────我が力、存分にお使いください」
ディンド卿の言葉を受けて、レド様は不敵に微笑む。
「…………」
不敵に笑うレド様は格好いいし、私を護ろうとしてくれるそのお気持ちも嬉しいけど────ディンド卿は、こんな流れで忠誠を誓っちゃって本当にいいのかな、と────そんな考えが浮かぶ。
でも、まあ、ディンド卿の話を聴いていた限りでは、恩を返すことができなくて自信を無くしていただけのようだし────これでいいのかもしれない。
しかし…、レド様の───ラムルのフェミニストっぷりは、ファルリエム辺境伯家伝来のものだったとは…。
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