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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十一章―ファルリエムの忘れ形見―#6
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に佇む人物に気づくと───足を止めた。

 ディドルさんは、眼を見開き────呟く。

「…ルガレド様」
「久しいな、ディンド卿」

 ちょうど、この通路には私たちしかいない。

 レド様の存在に気を取られているディドルさん───ディンド卿は、私が【認識妨害(ジャミング)】を発動させたことには気づかなかった。

「少しでいい。話をさせて欲しい、ディンド卿」
「………解りました」

 ディンド卿は、観念したように頷いた。

「リゼ、頼む」
「はい、レド様」

 私は、レド様の言葉を受け、【転移(テレポーテーション)】を発動させるべく、魔力を【魔術駆動核(マギ・エンジン)】へと流した────


◇◇◇


「突然、押しかけて済まないな、ベルネオ」

 私たちは、ベルネオ商会の商館の一室を借り受けていた。

 この商館は名ばかりで、レド様の有事の際の拠点とすべく調えたようで、平時は倉庫兼ベルネオさんの皇都滞在時の住居として利用しているらしい。

 ベルネオ商会の店舗は別にあり、従業員たちはそちらに詰めていて、ここにはベルネオさんしかいない。

「いえ、勿体ないお言葉です。────お久しぶりです、ディンド様」
「べネスか。…元気そうだな」

 しかし───この部屋、何もないな。レド様を立ちっぱなしにさせておくのは、忍びない。

 私は、今リフォーム中のお邸から、今日創り上げたばかりのソファセットを取り寄せる。

 レド様とディンド卿に座ってもらおうと振り向くと、ベルネオさんとディンド卿が唖然とした表情を曝していた。

「どうぞ、レド様」
「ああ。ありがとう、リゼ」
「ディンド卿も、どうぞお座りください」
「…………かたじけない」

 アイテムボックスにストックしてある温かいままのお茶が入ったポットと、お邸の厨房からカップアンドソーサーを2セット取り寄せてお茶を注ぎ、レド様とディンド卿の傍に音を立てないようにそっと置く。

「ありがとう、リゼ」
「…………かたじけない」

 私は、お礼を伝えてくれた二人にそれぞれ頷いてから、中腰になっていたのを立ち上がって、レド様の斜め後ろに控える。



「それでは、改めて────10年振りくらいか…、ディンド卿」

 レド様が口火を切ると────ディンド卿が、深々と頭を下げた。

「ファルリエム辺境伯家を護れず────っ真に申し訳ございません。ルガレド様には────本当に…、大変申し訳なく────」

 ディンド卿の声と、膝で握られた拳が────震えている。

「頭を上げてくれ、ディンド卿。それは────貴殿のせいではない。ウォイドも俺に同じように詫びたが、悪いのは────そもそもの諸悪の根源は…
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