暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十一章―ファルリエムの忘れ形見―#5
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

「魔獣ですか?」
「そうだ。帰り際、襲われたらしい。仲間が3人取り残されているそうだ」
「場所は?」
「トファルの森とヴァムの森を繋ぐ道の途中のようだ」

 一本道だから案内は必要ないな。

「魔獣の詳細は?」
「おそらくブラッディベアで───巨大化しているとのことだ」
「了解。すぐ向かいます」
「頼んだ。オレたちも後から向かう」
「お願いします。────アーシャ!」
「はい!」


 アーシャとジグを伴い、ギルドを飛び出す。

 人通りが途切れた所で、私は【認識妨害(ジャミング)】を発動し、続けて【転移(テレポーテーション)】を発動する。道がヴァムの森に接する地点に跳ぶと、誰もいないことを確認して、【認識妨害(ジャミング)】を解く。

 そして───トファルの森方面へ向かって奔り出した。


 魔力によって身体能力を強化している私たちは、程なくして、魔獣の姿を捉える。

 なるほど────あれは確かにブラッディベアが魔獣化したものに違いない。

 遠目には、ブラッディベアの姿そのままに巨大化しただけのように見えたが────近づいてみれば、両腕とその手先に埋め込まれた爪が、異様に発達しているのが目に入った。

 【心眼(インサイト・アイズ)】で視てみると、巨大化し変貌している割に、内包する魔力が少ないことに疑問が過ったけど────考えるのは後回しだ。
 とにかく、魔力は身体強化に使われるのみで、魔法を撃ってくる心配はなさそうだ。

 魔獣の前には、前情報と違い、4人の人間がいた。うずくまるように3人伏していて────魔獣からその3人を庇うように、一人の大柄な男が大剣を手に、間に立ち塞がっている。

 灰色の短髪を後ろに流し、鷹の眼のように鋭く魔獣を睨みつけている男───あれは…、ギルドで会えたらと思っていた────ディドルさんだ。

 ディドルさんは身体全体で荒い息をしていて───構えた左腕から血が滴っている。ケガを負っているみたいだ。

 魔獣の左腕は中程で斬り落とされていた。ディドルさんの大剣が血に塗れていることから、ディドルさんの仕業と見ていいだろう。

 ブラッディベアは熊型の魔物で、動作が素早い上、膂力があり───低ランカーでは相手にならない。血のように真っ赤な毛の色と───その血気盛んな獰猛さの二重の意味で、“ブラッディベア”と呼ばれている。

 そんなブラッディベアが魔獣化したのだ。いかに手練れとはいえ、3人ものケガ人を庇いながら、一人では手に負えるわけがない。

 魔獣が右腕を振り被る。ディドルさんに逃げる様子はない。おそらく、自分が避ければ、後ろにいる冒険者に害が及ぶからだろう。

「アーシャ、魔獣は私がやるから、あの人たちをお願い!」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ