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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十一章―ファルリエムの忘れ形見―#5
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くやった」

 バドさんは呆れた表情を隠さず溜息を吐くと────苦笑いを浮かべ、そう結んだ。

 何だか───最近、買い被られてばかりいるような気がする。ちょっと、いたたまれない。


「あ───そうだ。お前、今回は血抜きしていなかったろう?」

 バドさんが唐突に言い出し───倉庫の隅に置いてある、前世で言う“一升瓶”数本を指さした。瓶はどれも、赤黒い液体で満たされている。

「どうにか、あれだけ集められたが────持ってくか?」

 以前なら、撤去作業中に持ち帰れるだけ血を抜かせてもらっていた。

 だけど今の採取の仕方では人前でするわけにはいかなかったのと───魔獣の件で撤収に時間をかけたくなかったのもあって、今回は諦めたのだ。

 もしかして────私のために採っておいてくれたのだろうか。

「でも…、サヴァル商会にでも持ち込めば、少しはお金になるのでは────」
「正直、どの個体の血がどれくらい入っているのか判別がつかない。金をもらったところで、どいつに振り分ければいいのか解らんし、かといってギルドのものにしてしまうのも着服と受け取られかねないからな。換算しない方がいい。お前が要らんと言うのなら捨てるだけだ。遠慮なく持っていってくれ」
「それなら────有難くいただいていきます」

 これは、ラナ姉さんの魔玄作製の練習に使わせてもらおう。

 ラナ姉さんも、魂魄の位階が上がったことにより、【魔力操作】が可能になったので、現在、鋭意訓練中だ。

 ラナ姉さんは、私の魔玄作りの試行錯誤に付き合ってくれていただけあって、魔玄の作製に精通している。【魔力操作】を覚えられたら、【技能】として昇華するのに時間はかからないはずだ。



「それにしても────ガレスの奴、遅いな」
「そういえば、そうですね」

 血の入った瓶をマジックバッグにしまった後、しばらく待ってもガレスさんが戻って来る様子がない。

 見に行った方がいいかもしれないという考えが浮かんだとき────

「リゼさん!至急、ギルドの方へ来てください…!」

 血相を変えたセラさんが、倉庫へ駈け込んで来た。

 私は黙って、倉庫を出てギルドへと向かう。

 アーシャと姿をくらませたジグが後ろからついて来ていることを確かめると、その後は意識を逸らすことなく、ギルドへと踏み入る。

「リゼ!」

 カウンターの前に、つい先日のように人だかりができていて、やはりその中心にいるガレスさんが、私を見つけて叫んだ。

 人だかりが割れて、ガレスさんの側へ行くと、そこには腕をケガしている若い冒険者がいた。
 二の腕を斬り裂かれたらしく、止血のために巻かれた布の上からでも、ぱっくり割れているのが見て取れる。


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