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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十一章―ファルリエムの忘れ形見―#4
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ろしくお願いしますね」

 これは、同じ冒険者としての依頼だ。

 この“膨張期”にあって───皇都に滞在する高ランカー冒険者の数が足りていない。私も出来る限りは狩りをするつもりではいるが、セレナさんたちにも協力してもらいたい。

「はい。お任せください」

 セレナさんが応え、ヴァルトさんとハルド君も頷く。

「それでは、お邪魔しました」

 私がそう締めくくり、【転移(テレポーテーション)】を発動させようとしたとき────セレナさんが、何か言いたげに私を見ていることに気づいた。

「セレナさん?」

 セレナさんは仄かに頬を染め、躊躇うように視線を泳がせる。

 その様子は大変可愛らしいけれども────セレナさんが何を言いたいのか解らずに、私は首を傾げた。

「あの…、リゼラさん────私、その…、」

 意を決したように私に視線を定め、セレナさんは口を開いたが、言葉が続かない。

 根気よく続きを待っていると────セレナさんがようやく、躊躇いがちながらも続きを口にする。

「リゼラさんは…、その、私の主となる方ですし…、とてもお忙しいと解っています…。ですが───す、少しでも時間が空いたら…、また───私と…、お、お話しして、いただけませんか…?」

 そう言うと、セレナさんは───いたたまれなさそうに、視線を足元に落とした。

「隊長さん、お嬢は気軽に話せる友人がいないんだ。偶にでいいから、お嬢の話し相手をしてやってくれないか?」
「ちょ、ヴァルト…!?」

 見かねたのか、ヴァルトさんが口を挟み────セレナさんは、顔を真っ赤に染めて慌てる。

「あ、あの、御迷惑ならいいんです…!」
「いえ、迷惑どころか、嬉しい申し出ですけど────ただ、ちょっと意外な気がして。セレナさんなら、友人になりたいという人は多いと思いますが…」

 大人しいけど芯があって───思いやりもあって、こんなに可愛いらしい人なのに。

「いえ…、私は────跡取りである兄にあからさまに嫌悪されていましたので…、社交界でも同年代の貴族令嬢からは馬鹿にされていました。侍女も、私の専任は誰もやりたがらず────今まで親しく話せる同性はいなかったんです…」

 セレナさんは、寂し気に眉を下げた。

「冒険者になっても…、私が貴族の出だと判ってしまうみたいで────やはり遠巻きにされていて…。だから…、私のことを馬鹿にしたりせず、普通にお話ししてくれたのは────リゼラさんが初めてなんです…」

「…そうなんですか。では────私が、セレナさんの初めての友人ということですか。それは、嬉しいですね」

 私がそう言うと────セレナさんは、眼を見開いた。

「私のこと…、友人────と、
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