暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十一章―ファルリエムの忘れ形見―#3
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

「何と言うか────鮮やか過ぎる花のような子だったな…」

 エルがウォイドさんと共に、現在借り受けている劇場へと戻った後───レド様がしみじみと呟いた。

 言い得て妙な表現だ。

 確かに────女優であるエルは、目を遣らずにはいられない存在感がある。ああいうのを、“華がある”というのだろう。

「それにしても…、リゼが、ベルネオはともかく────エルと知り合いだったことは驚いた」

 レド様の言葉に、私は苦笑いを零す。
 まあ───私もこの場にエルが現れたことには驚きましたが…。


「ところで───ラムル。私とエルが友人だということを知っていたのに…、どうして、このことを教えてくれなかったんですか?」

 ラムルには、馬の件で、ウォイド劇団を訪問してもらっている。

 レド様の親衛騎士となる直前に逢いに行ったきりだったので、まだ馬を必要としているかの確認と、必要なら払い下げる旨を知らせるために、行ってもらったのだ。

 頼んだとき、私とエル───ウォイド劇団との関係を話してあった。

「それは────偶には、リゼラ様を驚かせたかったからですよ。いつも、リゼラ様には驚かされてばかりですからね」

 ラムルは、悪びれもなく、涼しい顔で言う。

 この表情────しれっと悪態をつくジグにそっくりだ。
 やっぱり親子なんだな────と、妙に感心してしまった。

「そんなに、驚かせたことありましたっけ…?」

 私は首を傾げる。

 ラムルが驚くようなこと────そんなにあったかな?
 白炎様のことくらいだと思うけど。

 すると───何故か、レド様やラムル、レナスが、ちょっと呆れたような表情になった。ジグも呆れているような気配を醸している。

「リゼ…、本気で言っているのか?」

 え、本気ですけども…。


「そ、そんなことより、代わりのお邸となる物件を案内してもらいましょう!────ベルネオさん、お願いします!」

 何となく話題を変えた方がいいような気がして、ベルネオさんに話を振る。
 ベルネオさんは、少し困ったように笑いを浮かべながらも、乗ってくれた。

「…そうですね。時間も有限ですし、参りましょうか。実は───今回ご紹介する物件は、この2軒先にある空き家なんです。
とある豪商が羽振りの良いときに建てたもので、店舗としてではなく───皇都に滞在する際に寝泊まりするために使っていたようです。妻や使用人を引き連れて上京していたらしく、部屋数も多くとられているので、ご希望に添えると思います。
かなり年季が入っており、修復など一切されていない状態ですので、金額も相応に低価格となっております。突然なくなっても、撤去したものと思ってもらえるはずです」


[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ