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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十一章―ファルリエムの忘れ形見―#2
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女優は誰だったんだって、未だに問い合わせがあるし」

「…リゼが────舞台に立った、だと?」

 レド様が、重く低い声音で────エルに訊く。

「ええ、そうなんですのよ。わたくしがケガをしてしまったとき、リゼを代役に立てたのですけど────ヒロイン役もヒーロー役もこなして────本当に、うっとりするくらい素晴らしくて…。特に、ヒーロー役!殺陣(たて)も完璧で────格好良かったわ…」

「あのときは、皆が困ってたから引き受けたけど…、二度とやらないからね」

 恍惚とした表情で語るエルに、私は釘をさす。

 あれは非常時だからこそやれたことなのだ。通常時に自主的にはやれない。

 思えば、あのときエルと出会って────あれがきっかけで、親しく交流するようになったんだった。

 ケガを押して、それでも舞台に立とうとしていたエルの横顔を思い出す。真っ直ぐで────澄んでいて、その決意に圧倒された。

「ええ〜」
「そんな悲し気な表情をしても、やれないからね」


「エル、一つだけ忠告しておく」
「え、ちょ───レド様?」

 レド様が私を後ろから抱き込んで、エルに宣告する。

「リゼは俺のだ。お前には譲らない」

 エルは一瞬目を丸くしたけど、次の瞬間には瞳をキラキラと煌かせる。

「それなら───ルガレドお兄様、リゼと共にわたくしの劇団に入りませんこと?一緒なら、問題ないのではなくて?麗しき姫君を護る凛々しい隻眼の騎士────ありきたりだけど、いい!普遍的で凄くいいですわ…!女性に人気出ること間違いなし…!」

「リゼを護る騎士…」

 何で、ちょっと満更でもない表情になってるんですか、レド様…。私は、絶対いやですからね?


◇◇◇


「さて───わたくしたちは、これでお暇をさせていただきますわ」

「待ってくれ、エル。その前に確かめておきたいことがある」

 用事は済んだとばかりにウォイドさんに目配せしたエルを、レド様が呼び止める。

「……ディンド卿の行方は判っているのか?」

 レド様が意を決したように訊くと、エルは世間話でもするかのように、さらりと答える。

「お父様は、ドルマ連邦を拠点として傭兵をしているらしいですわ」


「逢っていないの?」

 その言い方に思わず口を挟むと、エルは苦笑して頷いた。

「私に迷惑かけたくないからって────逢ってくれないのよ。根が真面目過ぎるのよね」
「…エルは、お父様を見習った方が良いと思う」
「私の何処が不真面目だというのよ?」

 …例えば、この部屋に入って来たときの貴女の言動ですね。


 ベルネオさんが私たちのやり取りに苦笑しながら、後を続ける。

「ディンド卿は
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