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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十章―見極めるべきもの―#6
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 オーガロードだったと思しき、その魔獣は────オーガの姿はそのままで、全長4mに届くほど巨大化していた。

 濁り切った眼からは、完全に正気を失っていることが窺えた。涎が垂れる大きな口からは、荒い息が漏れ出し、音を立てている。

 魔獣が現れたのは、私がいる場所とはちょうど反対側────真向いだ。

 まだ───集落の中へは入り込んではいない。塀の向こうに上半身が見えるだけだ。

「た、退避しろ…っ!」

 誰かが叫んだ。

 助っ人に来てくれた低ランカー冒険者たちが血相を変えて、反対側───私のいる方へ走り出した。

 集落中央に立つ見張り台の下で休んでいたアーシャとBランカーたちが、慌てて立ち上がったが────魔物の群れを殲滅させた後だけあって、その動きは鈍い。

 私は、魔獣に向かって奔り出す。

 魔獣が集落内へ踏み入った。今度は塀が歪むだけでは済まず、鈍い音を立てながら崩れ落ちた。

 魔獣の一歩は大きく───何歩か前に踏み出しただけで、一気に見張り台の側まで近づく。

 タンク役の冒険者たちが、盾を手に魔獣の前に立ちはだかるも───魔獣が、大樹ほどもあるその太い腕を軽く振るっただけで、吹き飛ばされてしまった。

 ディドルさんやヴァルトさん、ドギさん───そして、アーシャが剣を構えるが、先程と同様、魔獣の腕に振り払われる。
 体格のいいディドルさんたちでさえ、軽く吹き飛んだ。

 残された他の冒険者たちは、立ち向かう気概を削がれたのか────その場に立ち尽くす。

「アーシャ…!」

 私がなりふり構わず【身体強化(フィジカル・ブースト)】を発動させようとしたそのとき────不意に、魔獣の顔や上半身に氷片が襲い掛かった。

 セレナさんの魔術だ。

 見ると、セレナさんが他の冒険者たちを庇うように前に出て、魔術陣が仕込まれているらしい掌よりも大きい魔石のメダルを掲げていた。

 けれど───氷片は魔素で強化された魔獣の皮膚には、刺さるに至らず、ぶつかっただけで、ぱらぱらと足元に落ちていった。

 魔獣は、傷は負わなかったものの───セレナさんを敵と見なしたらしく、その濁った眼をセレナさんに向ける。

 セレナさんの身体が震えたのが────遠目にも見て取れた。

≪レナス、アーシャをお願い…!≫
≪御意!≫

 私は足を止めずに、レナスと【念話(テレパス)】を交わす。

 魔獣が両手の指を組んで、セレナさんに振り下ろした。魔獣の手より先に、私はセレナさんに辿り着く。

 セレナさんを両手で抱き上げ────横に跳ぶ。一瞬前まで、セレナさんが立っていた位置に、魔獣の手がのめり込んだ。

 魔獣は、セレナさんに狙いを定めているらしく、こちらに
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