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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第二十章―見極めるべきもの―#6
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向き直る。

 結果的に、他の冒険者から魔獣の気を逸らせたが────これからどうすべきか。

 こっそり【心眼(インサイト・アイズ)】を発動させてみたけれど────私にとっては、そこまで脅威的な相手じゃない。

 ただ───かなりの巨体なので、【対の小太刀】では斬り裂くのは、出来ないこともないが、手間がかかる。
 【大太刀】を取り寄せたいところだが───問題は人目だ。魔術を使うのは論外だし、どうしたものかな。

 突進してくる魔獣を、セレナさんを抱えて避けながら───考えを(めぐ)らす。

「あ、あの…、ごめんなさい。私…、足手まといですよね…」

 腕の中で、セレナさんが、いたたまれなさそうに囁く。大人しそうな印象通り───耳障りはいいが、か細い声だ。

「私が魔術で魔獣を引き付けますから、貴女は逃げてください」

 セレナさんは、そんな───健気なことを言う。

 だけど───セレナさんの状態を見るに、魔術をもう一度行使できるほどの魔力が残っていないように思える。

 セレナさんの身体に力が入っていないのは、魔力が少ないからだろう。

「ですが、セレナさんは、魔力がそんなに残っていませんよね」

 私がそう訊くと───セレナさんは眼を見開いた。

「…判るんですか?」
「ええ。私は魔法を使うので」

 驚くセレナさんに、私はごまかす。

 そのとき、魔獣がこちらに向かって腕を振るったので───私の意識は魔獣に移った。

「あの…、リゼラさん」

 遠慮がちに呼ばれ、セレナさんに再び目を遣ると────セレナさんは何か強い決意を湛えた眼差しで、私を見ている。

「これ、使ってください。貴女なら、使えるはずです」

 セレナさんはそう言って────私に魔石のメダルを差し出した。
 今度は、私が眼を見開く。

「でも────大事なものなのでは?」
「いいのです。貴女は私を助けてくれた。それに───助かる方法があるのに、つまらないことに拘って死ぬなんて馬鹿らしい…」

 セレナさんは、何か思うところがあるのか────顔を陰らせて呟く。

「では…、お借りします」

 私は、バックステップで魔獣から距離を取ると────セレナさんを腕から降ろした。

 セレナさんが、手に持ったままの魔石のメダルを、再び私に差し出す。

「ありがとうございます───セレナさん。お借りします」

 私はもう一度そう言って、メダルを受け取る。

 メダルは掌よりも一回り大きく、魔術陣が彫り込まれている。やはり古代魔術帝国のものとは、ちょっと仕様が違う。

 魔獣が私たち───というかセレナさんを追って、突進してくる。

 私は、メダルを胸の前に掲げて────軽く
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