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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十九章―誓いと祝福―#6
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うなのに───」
「…このお邸のことですか?」
「…っ」

 レド様は驚いたように息を呑んだ後────嬉しそうに微笑んだ。

「リゼには敵わないな。本当に────俺のことはお見通しのようだ」

 一転して、レド様の表情が曇る。レド様は───ちょっと躊躇ってから、口を開いた。

「契約の儀の後で、リゼをこの邸に連れてきたとき────この邸は鍵が壊れていたと話したのを覚えているか?」
「はい、覚えています」

「あれは…、壊れたのではなく─────壊されたんだ」

「…壊された?」
「ああ。初めて遠征に行かされて邸を空けたとき───帰って来たら…、壊れていた。明らかにこじ開けた形跡があった。だけど、邸内は何かされた形跡はなかったから、皇妃一派の嫌がらせかと思ったんだ。
ジグとレナスに確かめたら────しばらく邸を空けることになるから、エントランスホールに罠を仕掛けてくれていたんだそうだ。引っかかった形跡があったと言っていた。
皇妃一派か、物盗り目的の輩かは判らないが────罠を仕掛けてくれていなかったら…、きっと荒らされていたはずだ」

 レド様が、自分の手を握り締める。

「それから…、遠征に行かされるたび────帰るのが怖かった。もし…、この邸がなくなっていたらどうしよう、と。帰って来て───邸を見て、何もされていないのを確かめて、いつも安堵していた」

 そのときのことがフラッシュバックしているのか、レド様は眉を寄せて固く目を瞑った。

「リゼと【契約】できたおかげで、この邸にはおいそれとは侵入できなくなったとは解っている。だが…、この邸を空けるのが────心配なんだ。
今度は、長く空けることになる…。もしかしたら────帰って来ることはできないかもしれない」

 確かに、状況によっては────赴任先の辺境の地で生涯暮らすことになる可能性もある。

 そこで、エルフの隠れ里で手に入れたログハウスについて報告したときのことを、ふと思い出した。

 レド様はあのとき────拠点を持ち運べると聴いて、考え込んでいた。

「レド様は────このお邸を持って行きたいのですね?」

 レド様は眼を開けて、私を見て────また、泣き出しそうな…、苦笑のような表情になった。

「リゼには…、本当に見透かされているみたいだ」
「当然です、私は────いつだってレド様を見ているんですから」

 私は、安心させるように、レド様に微笑みを向ける。

「それなら────持って行きましょう、このお邸を」

 私は安心させたくて、笑ってそう言ったけれど───レド様の表情は陰ってしまった。

「だが───いきなりこの邸がなくなったら…、不審に思われる。俺たちの事情が知れてしまったら────」

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