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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十九章―誓いと祝福―#5
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に歩み寄る。

「いや。よく来てくれた、我が姫」

 ヴァイスは、私の腕に頭を擦りつける。私はその行動に口元を緩め、ヴァイスの頭を撫でてから、自分の工房へと向かって歩き出す。

 ノルンが私の右側に、ヴァイスが私の左側に並ぶ。

 ノルンが縋りつくように私の手を握ってきたので、私はノルンの小さな手を────強く握らないよう気を付けて握り返す。

「この森以外でも、この姿をとれたらいいのに…」

 ノルンが、寂し気にそんなことを呟く。

 ノルンは、この森の地下空間にある聖結晶(アダマンタイト)と一体化しているので、精霊樹から流れ込む豊富な魔素を利用して、実体をとることができるらしい。

 だから────ノルンはこの森を離れると実体を保てないのだ。

「そうしたら…、何かあったときとか呼ばれたときだけじゃなくて────もっと、(マスター)リゼラや(マスター)ルガレドの役に立てて────傍にいられるのに…」

 続けて呟かれたノルンの言葉に、私は足を止めて───つられたように足を止めたノルンを見る。

 自分の存在に気づいてもらえないことに悲しみ────実体をとることができて、あんなにはしゃいでいたのは────レド様と私の傍にいたかったから…?

 俯くノルンの頭をそっと撫でると、私は顔を上げたノルンに笑いかける。

「それじゃ、ノルン───“端末”でも創ろうか」

「“端末”───ですか?」
「そう。あ、“端末”よりも、ノルンが操って動かせる魔導機構の方がいいのかな。この森以外でも、ノルンが自由に過ごせる方法を考えよう」

「ですが───(マスター)リゼラは、忙しいのではないですか?(マスター)ルガレドに色々頼まれていたでしょう?」
「そうだね。でも、ノルンが手伝ってくれるでしょ?この森以外でも、ノルンが色々と手伝ってくれるなら、助かるし」
「勿論です、お手伝いします!────だけど…、本当にいいのですか、(マスター)リゼラ」

 不安気に私を見上げるノルンの頭を、私はまた撫でる。

「ふふ、皆、心配性だよね。大丈夫、無理なんてしないよ。ああ───でも、創り始める前に、やらなければいけないことを整理して、優先順位をつけて、きちんと計画を立てようかな。ノルン───手伝ってくれる?」
「はい!」

 私はノルンの手をとって、また工房へと向かって歩き出す。一緒に留まっていたヴァイスも、また歩き始めた。

 後ろに控えているレナスの心配そうな表情が目の端に映り────私は小さく苦笑する。

 皆───本当に心配性だ。

 私は大丈夫なのに────そう思いながらも、やっぱり嬉しくて、私の口元が緩んだ。

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