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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十七章―密やかに存在するもの―#6
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た。

 どの子も、(つぶ)らな瞳を覗かせて───興味津々といった感じでこちらを見ている。

 その様子が物凄く可愛くて、眼が合った子に微笑みかけると、それにつられたのか姿を見せた。

 栗鼠に似ているその子は、器用に木の枝を伝い、歩いている私の肩に跳び移ってきた。白炎様のように、私の頬に頭を擦りつける。

 すべすべの毛が気持ち良くて、思わず口元が緩む。

 すると、似たような子が、次々に肩や頭の上に何匹も跳び載ってきた。小鳥に似ている子もいる。

<<<こら、神子姫を困らせるな。後にしろ>>>

 前を歩く白狼が振り向いて言うと───瞬く間に、誰もいなくなった。
 ……後ならいいの?


◇◇◇


「…っ」

 白狼の先導で森を抜け、そこに辿り着いたとき、あまりに幻想的な───現実とは思えない、その美しい光景に、私は息を呑んだ。

 ぽっかりと空間が現れたのは、先程と同じだったが、そこにあったのは、湖でなく────あの湖に匹敵するくらいの大樹だった。

 一体、どれくらいの時を経ているのか────小さな町くらいはある。

 全長も周囲の森の木々などより遥かに高く、下手をすれば小さな山より高い。ところどころ苔むした幹に、木漏れ日が模様を描いていた。

 これが────ネロが話していた“精霊樹”。

 この大樹だけでも、現実とは思えない光景なのに────その精霊樹を取り巻くように、木漏れ日を受けて銀色に煌めく鱗を纏った魚たちが、宙を泳いでいた─────

 森を抜け出た私の横を、“リュウグウノツカイ”という深海魚に似た───平べったい銀色の魚が、解いたリボンのようなその身体と赤い背びれを閃かせ、通り過ぎていった。

 頭上には、“エイ”によく似た魚が、“凧”のように宙を滑空している。
 よく見ると、透き通った“クラゲ”のようなものも、辺りを漂っていた。

「すごい…。海の中にいるみたい…」

 私が踏み出して、手を差し伸べると、“クマノミ”に似た、色鮮やかなオレンジ色の小魚が、私の手に群がる。

<<<あれらが海より来たものたちだと、よく解ったな>>>

 それまで淡々としていた白狼が、驚いたようにこちらを振り向いた。

「あれは、海に棲む生き物なのか?」

 レド様の声音も、驚きに満ちている。

 そうか、内陸に住んでいたら、魚とかクラゲとか知らないよね。魚が料理に出たとしても、レド様の場合は調理された状態だろうし。

「この子たちも、あちらを泳いでいるのも、“魚”という生き物です。本来は、水の中に生息するものなんですが…」
「あれが、魚なのか…」

 レド様が、あどけない子供のように呟く。レド様だけでなく、他の皆も声は上げていないけれど
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