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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十七章―密やかに存在するもの―#5
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、どうした?」

 レド様に声を掛けられたが────私は白狼から目を離せなかった。
 私の視線を追って、レド様も白狼に気づいたようだった。

「あれは…?ただの獣ではないようだが───魔物ではないよな?」
「ええ。おそらく、精霊獣ではないかと」

 対岸までかなりの距離があったが、それでも、白狼が、レド様と私をじっと見ているのが判った。

 不意に───白狼が動いた。

 湖に前足を踏み出す。しかし、前足は沈むことなく水面に乗り上げた。
 四肢全部乗り上げると、白狼は、前方に───こちらに向かって、歩み始める。

「こちらに────来るつもりか?」
「…そのようです」

 レド様も私も、腰を浮かせた。

 他の皆も事態に気づいたようで、緊張が(みなぎ)るのを肌で感じた。

「ガゼボを収納します。皆、外に出てください」

 相手は魔物ではなく、精霊獣だ。戦闘になるとは思えないが、万が一ということもある。

 私は、全員がガゼボから出たことを確認すると、ガゼボを拠点専用スペースへと移動させた。

「アーシャ、念のため、装備を替えて」
「うん!」

 アーシャは腕時計を使って、侍女服から冒険者の装備へと替える。



 私たちが注視する中、湖を横切ってこちらに辿り着いた白狼は、岸辺へと上がってきた。

 皆が警戒して、並び立つレド様と私の前に出ようとしたが───レド様が押し止める。

「いい。───大丈夫だ」

 【心眼(インサイト・アイズ)】で見る限り、やはりこの白狼は精霊獣で────その魂魄はこの湖の水面のような輝きを纏っていて、敵意も見当たらない。きっと───レド様も神眼でそれを確かめたのだろう。

 白狼は、レド様と私の前まで歩み寄ると────その(こうべ)を垂れた。

<<<神竜の御子と神子姫とお見受けする>>>

 直後、【案内(ガイダンス)】とも白炎様とも違う、深く脳に染み渡るような───不可思議な声が響く。

 ネロは普通にしゃべるので、少し驚いてしまった。そういえば───ネロは私の魔力をあげるまで、話せなかったと思い出す。

「何故、俺たちの前に現れた?」

<<<神竜の御子と神子姫。どうか…、我らを助けていただきたい>>>

「助ける?───どういうことだ?」

 レド様が、訝し気に返す。白狼は下げていた頭を上げ、レド様と私を───ネロとそっくりなその琥珀色の眼で見る。

<<<我らが長と、契約を交わしていただきたい>>>

「…お前たちの長と?」

 精霊獣の長────以前、ネロに聞いたことがある。

 精霊獣は色々な種類がいて、森の中で共生しているけれど、その数多いる精霊獣を統べる存在がいるのだ───
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