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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十七章―密やかに存在するもの―#4
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「鳥、ここを借りるぞ」
<…構わんが、何をするつもりだ?>
「ちょっと、リゼがいない間に皆に相談したことがあってな…」
<我が神子がいない間に?────小僧、何を企んでいる…?>
「人聞きの悪いことを言うな。俺がリゼに対して悪だくみをするわけがないだろう」

 ルガレドは憮然と言い返しながら、イスに腰を下ろした。

「リゼにお礼をしたいと思ってな…。いつも────何かしてもらってばかりだからな」

 ルガレドは、自分の左手の薬指に嵌められた指環を見て、口元を緩めた。

 リゼラが、自分のために創り上げてくれたものだ。
 懐中時計も嬉しかったが────これは、それ以上だ。

 リゼラの前世の世界では、結婚した男女が身に着けるものだという。

<ふむ。いい心掛けでないか。我が神子に存分に感謝し、存分に尽くせ>
「お前なんかに、言われるまでもない。感謝は────それこそ、しない日はないくらいだ。リゼには、本当に感謝してもし足りない…」

 皇妃の気まぐれで成人することになった、あの日────リゼラが現れて、ルガレドの人生は劇的に変わった。

 今ある全ては────リゼラがもたらしてくれたと言っても過言ではない。

「リゼと出逢えなかったらと思うと────本当にぞっとする」
「確かにそうですね。最初の親衛騎士候補だった男───バルラナ子爵令息のままだったら…、全然違った状況だったと思いますね」

 ルガレドの心底からの呟きに、ジグが心底から同意するように頷く。

「バルラナ子爵令息…、確か────ジェスレムと諍いを起こしたという騎士だったか?」
「ええ。職務にも忠実で、評判も悪くありません。ですが、少々融通が利かない人物のようですね。ジェスレム皇子に苦言を呈して、顰蹙を買ったとのことです。幸いなことに、その当時、皇妃は自分の侍女を貶めるのに忙しくて、排除を免れたらしいのですが────ルガレド様の親衛騎士を選ぶ際、しつこく恨み続けていたジェスレム皇子が推薦したと聴いています」
「あいつは、本当に迷惑な奴だな」

「それよりも────バルラナ子爵令息がルガレド様の親衛騎士になっていた場合ですよ。まず【契約】ができないでしょうから、改修できず邸も前のまま。夜会服も以前のボロボロのものを着る破目になり、夜会では惨めな思いをしたでしょう。
まあ、バルラナ子爵令息は真面目な人物みたいなので、きっと我々は存在を明かしたでしょうから────そうすると、ムサい男4人で…、経費の件も食事も改善されず───悲惨な生活を送ることになっていたと思いますね。
ああ───リゼラ様で本当に良かった…」

 ジグは自分の想像に顔を顰め────しみじみと、最後にそんな言葉を付け加えた。

「確かに、それは想像するだけで
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