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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十五章―それぞれの思惑―#6
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い兄上の親衛騎士を押し付けられ、その上、婚約までさせられてしまって…。
どうにか助けてやりたくて、母上に訴えてみたけれど、母上はファミラの巧妙な演技に騙されていて、信じてくれないし、お祖父様はイルノラド公爵に恩を売ることしか考えていないんだ」
「ジェスレム殿下────あなたは、何てお優しいお方だ。よろしい、このゾブルめがお力添えを致しましょう」
「本当か!?」
「勿論ですとも。ルガレド皇子の親衛騎士を、皇子から解放して差し上げればよろしいのですね?」
「あ、いや、違うんだ。僕の親衛騎士にしたいんだよ」
「殿下のですか…?ですが、殿下には、すでにイルノラド公女という親衛騎士がいらっしゃるのでは?」
「そう、そこなんだよ。ファミラを解任して、ファミラの妹を親衛騎士にしたいんだ」
「……殿下は────親衛騎士は解任できないということは、ご存知でいらっしゃらないのですか?」
ゾブルに戸惑ったように訊かれ、ジェスレムは眼を見開く。
「そうなのか?でも、母上の親衛騎士はよく替わっているけど?」
この国では、臣下に下り皇位継承権を手放した皇族以外は────皇族の伴侶も皇族になったと見なされ、親衛騎士を持つ決まりがある。
当然───ジェミナも皇王に嫁いだ時点で、親衛騎士を与えられている。
「皇妃殿下をお守りしている騎士は、厳密には親衛騎士ではないのです」
「あの男は、親衛騎士ではない…?」
ジェミナの側に侍る、最近着任したばかりの見目麗しい騎士が思い浮かぶ。そういえば────母は、どの騎士とも“契約の儀”を行っている様子はない。
「皇妃殿下の親衛騎士は、もう随分前に────お亡くなりになっているのです。たとえ皇王でも親衛騎士は生涯で一人だけしか持てないという定めがありますから、今、お傍にいらっしゃる騎士は、ただの護衛となります」
「そうだったんだ……」
親衛騎士は生涯で一人しか持てないことも、ジェミナが侍らせている騎士が親衛騎士ではないことも、ジェスレムにとって、初めて知る事実だった。
「なるほど…。親衛騎士は、生涯で一人だけなんだね…。だけど────母上の場合のように、親衛騎士が死んでしまったら仕方がない────と」
ジェスレムの口元が歪んで────笑みを形作る。
「ねえ…、ゾブル。どうしたら────いいと思う?」
ジェスレムの言葉の意味を悟り、ゾブルは一瞬、躊躇らしきものを覗かせたが────すぐに意を決したように、その野心に濁る眼を向け、ジェスレムによく似た────顔を歪ませたような昏い笑いを浮かべた。
「殿下は、剣術に関しても才がおありだとか。きっと魔獣を討伐することも造作もないのでしょうな。イルノラド公女も、確かな剣の腕をお持ちだそうで。きっと──
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