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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十五章―それぞれの思惑―#6
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く、生垣で造り上げた迷路も設えられている。所々にベンチが置かれ、時折ジェミナがそこに愛人を連れ込んでいることを、ジェスレムは知っていた。
ジェミナは今日、観劇に出かけていていない。
気兼ねなく、この中庭で過ごすことができる。ジェスレムはこの中庭に入ることを禁止されているわけではなかったが、ジェミナの機嫌によっては、叱責された上に追い出されることもあった。
侍従にお茶を用意させ、ガゼボで一人寛いでいると────そこに見知らぬ男が現れた。
「ご機嫌麗しゅう、ジェスレム殿下。寛いでいらっしゃるところをお邪魔してしまい、申し訳ございません。わたくしは、ゾブルと申します。どうかお見知りおきください」
小太りで、派手なジャケットを身に着け、
片眼鏡
(
モノクル
)
をかけたその男は───愛想よく、ジェスレムに声をかけてきた。
初めて会う男だが、その表情もジェスレムを見る目付きも、お馴染みのものだ。ジェスレムに取り入ろうとする思惑が、透けて見えている。
(ああ、母上の新しい取り巻きか…)
この邸には祖父によって厳戒態勢が敷かれ、許された者以外は入り込むことが不可能なこともあり、母が不在であるのに取り巻きが入り込んでいることに、特に何の疑問も持つことなく─────ジェスレムは、僅かにあった警戒心をあっさりと解いた。
「…僕は今、誰かと話をする気分ではないんでね。何処かへ行ってくれないか」
「何かおありになったようですな。────わたくしめに話してみませんか?もしかしたら、お力になれるやもしれませんぞ」
ゾブルは、ジェスレムに取り入るチャンスだと感じたのか、勢い込んで言葉を重ねる。ジェスレムは、その様子を見て、話してみてもいいかもしれないと思った。
この男は、権力者であるジェスレムに取り入りたいのだ。きっと気に入られるために、ジェスレムの願いを叶えようとするはずだ────ジェミナの取り巻きたちみたいに。
「実は、僕の親衛騎士のことで────ちょっと悩みがあってね」
「ほう。ジェスレム殿下の親衛騎士は、才女と名高いイルノラド公爵公女と聞いておりますが…」
「それが、とんでもない。噂とは違って────我が儘で傲慢な女でね。とても手を焼いているんだ」
「そうなのですか?公爵家から除籍された妹の方はそう聞いておりましたが、姉の方もそうだったとは…」
「いや、それが妹の方は違ったんだ。逆だったんだよ。きっと、ファミラが自分のやったことを、妹のせいにしていたに違いない」
ジェスレムは、ただの思い付きを口にしただけだったが、言いながら────そうだ、そうに違いないと考える。
「僕はね、ファミラの妹が気の毒で仕方がないんだ。ファミラのせいで除籍されて、あの周囲から見放されたどうしようもな
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