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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十五章―それぞれの思惑―#3
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参加したんだけど、仲間が油断しちゃってさ」
「そっか。二人も気を付けてね」
「大丈夫、ちゃんとわかってるよ」
「リゼ姉に散々、言われてるもんな」

「「常に周りを見て、どんなときでも考えるのを止めず、ここに帰ってくるまで気を抜くな」」
「だろ?」「でしょ?」

 ラギとヴィドが唱和して、にっと笑う。

 どんなときでも考えるのを止めるな────これは、前世の刀術の師匠だった“師範代”───祖父の教えだ。

 窮地でも考えるのを止めなければ、活路を見出すことができるかもしれないのに、簡単に諦めてしまうな────それが、祖父の口癖だった。

 前世では『おじいちゃんは熱血だね』と“お兄ちゃん”と笑ってたけど、転生して幾度か死線を経験して、今はこの教えがいかに大事か実感していた。

 子供たちにも、最期まで諦めず、屈せず、抗って────生きて帰って来て欲しいと思っている。

 ラギとヴィドの二人が、私が教えたことを守ろうと思ってくれていることが判って────私は嬉しくなった。

 笑みを向けると、二人とも頬を赤くして、顔を逸らす。思春期の男の子らしいな、と微笑ましくなって、私は笑みを深めた。


◇◇◇


「ところで、新しい部屋はどう?不自由なところとかない?」
「すっごく、快適!」
「あのベッド、すごくいいよ!自分だけの場所って感じで」
「ふふ、それなら良かった」

 二人とも、新しい部屋を気に入ってくれたようだ。

 二段ベッドって何かいいよね。前世の私は個室だったから、二段ベッドだったことはなかったけど、幼い頃の友達が妹と共有していて、羨ましかった記憶がある。

「それから、あの地下の広い部屋、あれもすっごくいい!」

 この“地下の広い部屋”とは────実は、こっそり地下に繋いだ、支援システムの支給事項の一つ“調練場”のことだ。

 この厨房のパントリーは地下に設えられている。その小さなパントリーの奥に扉があり、そこは鍵が紛失していて、ずっと“開かずの間”だった。

 今回、【最適化(オプティマイズ)】のおかげで開くことができて、その部屋はパントリーと同じくらいの狭い部屋であることが判ったのだけど、子供たちはそれを知らない。

 だから、パントリーを拡張して、その先に調練場を繋げて───かなり広い異次元空間となったが、“開かずの間”のせいで判らなかっただけで、元々、広い地下空間があったのだろうと考えてくれているはずだ。

「広いから、鍛練もできるし、騒いでても文句言われないし」

 この孤児院の庭は土壌が悪くて草木が育たず、ずっと空き地のままだったので、庭で、子供たちが鍛練したり、幼い子供たちが遊んだりしていたのだけど────住宅に囲まれているため、ちょっと歓
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