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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#7
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ちが没落するようなことになったら、私は何を感じるのだろう─────

 そんな疑問が、ふと頭を過った。

 でも、考えたところで────想像すらつかない。
 ちゃんと考えたくない────想像したくないだけなのかもしれない。

 あの人たちに没落してもらいたくない────というわけではない。

 それを()の当たりにしたときの自分の反応が怖い。

 ビバルとダムナの場合は、会ったことがないから感じなかっただけで、あの人たちが酷い目に遭うことを────私は喜んでしまうかもしれない。

 レド様の前で、あの人たちの憔悴しきった姿を嘲笑う────そんな醜態を(さら)してしまうのではないかと怖いのだ。

「………」

 ベッドに入って目を瞑れば、こんな気分でも、ちゃんと眠れることは解っていた。明日の朝には、気持ちよく目覚めるだろうことも。

 だけど、何だか眠りたくなくて────何か綺麗なものを見たくて、私は部屋を抜け出した。


 
 いつものように、私はサンルームに向かう。サンルームは、先程、レド様と過ごしていたときのまま、夜仕様になっていた。

 珍しく別の場所にいるのか、ネロは見当たらない。

 星や月の輝きに似せた仄かな光が降り注ぐ中、点在する花壇に植えられた樹木や花々を彩るぼんやりとした淡い光が、サンルームの薄闇をさらに柔らかいものにしている。

 何も考えたくなくて、花々や蝶────それを彩る優しい光を、ただ見つめていた。

 そうしていると、ささくれだっていた感情が、波が引くように静まっていった。静まった後も、何だかそこを動く気になれなくて、しばらくそのままでいた。

 光を纏う花々を縫うように────泳ぐように飛び交う、光を迸らせる蝶々を目で追って、ふと俯き加減だった顔を上げたとき、花々の向こうに佇むレド様の姿が目に入った。

「え…、レド様?」

 何でここにいるの?

「レド様、どうしてここに────レド様?」

 レド様は何故か、驚いたような表情のまま、呆然とこちらを見ている。

 呼んでも返答がなくて────まさか、夢遊病とかじゃないよね?と、そんな不安が掠めたとき────レド様が、口元を手で覆った。

「レド様?」
「ああ…、いや、何て言うか────憂い顔で…、花や蝶を見るリゼが───その…、あまりにも綺麗過ぎて────とても、この世のものとは思えなくて────」

 ええと…、今何て、仰いましたか?
 綺麗過ぎて、この世のものとは思えない?────私が?

 レド様に綺麗だと褒めてもらえたら、いつもなら、ただ嬉しいだけなんだけど────今日のは、嬉しいというより、心配になってしまった。

 恋は盲目というけれど────レド様
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