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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#6
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店内は素朴だが、とても清潔的だった。客は一人もいない。

 端っこだが明るい日が差す窓際の二人掛けの小さなテーブルに案内され、程なくして────温めた小さな丸パンとスクランブルエッグと焼いたソーセージがワンプレートに載せられた軽食と、温かいお茶が入ったマグが運ばれてくる。

 お茶を口に含むと、ビバルはここ数日の悪夢のような出来事が、本当にただの悪夢だったような気がしてきた。

(これから、どうするか…)

 パンをちぎって頬張りながら、そんなことを考えていると────

「あの…、お食事中すみません。ちょっとよろしいでしょうか」

 声を掛けられ、弾かれたように顔を上げると、そこには気の弱そうに(まなじり)を下げた、髪も髭も真っ白な初老の男が佇んでいた。

 男は執事服を着ており、物腰も品が良く、おそらくどこか貴族家に仕えているだろうことが窺える。

「…何か?」
「貴方、ボードゲームは嗜まれますか?」

 執事服の老人にそう訊かれ────ビバルは警戒して老人を睨んだ。

「実はですね…、もしボードゲームがお得意のようなら、坊ちゃまのお相手をしていただけないかと思いまして…」
「坊ちゃま?」

 老人がちらりと向けた視線の先を見ると、カウンターの脇に通路があった。その通路の先は開けていて、小部屋になっているらしい。

 入り口に扉はないが、カーテンが掛けられ、今はそのカーテンは端に寄せられて留められていた。

 目を凝らしてみると、ビバルがついているテーブルよりも大き目の円いテーブルと、揃いのイス────それから、そのイスに座る何者かが見えた。

 イスに座る人物は、大きさからみるとまだ成人前の子供のようだ。

「坊ちゃまは、ボードゲームがお好きでよくされるのですが…、家庭教師や使用人では相手にならないようでして───その…、強い相手と“賭けゲーム”をしてみたいと仰っておりまして。この辺りなら、“賭けゲーム”をするような方がいるのではないかと来てみたのですが────どうか、坊ちゃまにつきあってはくださらないでしょうか。勿論、謝礼は致しますので────」

 ほとほと困り果てたような表情で、老人は言う。老人の様子に嘘はないような気がした。

 これは、運が向いてきたかもしれない────ビバルは老人に気づかれないように、口元を歪めて笑う。

「…解りました。私でよろしければ、お相手しましょう」


 奥の部屋で待っていた子供は────執事服の老人の主に相応しく、その豪奢な飾りがついた服装から見るに貴族の子弟であるらしかった。

 白銀の柔らかそうな巻き毛に、薄い翠色の双眸を持ち、白い細面に整った顔立ちをした華奢な美少年で、見るからに勝気そうだ。

 少年は自分のゲーム
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