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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#5
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ド皇子も補佐官がついて、この申請、必要なくなったんなら連絡して欲しかったな、と」
「…そうですか。それなら────その申請、もう必要ありませんよね?」

 暗に早く帰れと言われて、ビバルは憮然としたが、訊かなければいけないことがあるので、表情を戻す。平静を装って、ビバルは口を開いた。

「ところで…、ルガレド皇子の補佐官というのは誰が?」
「…それを知って────どうするんです?」

 生真面目な管理官は、疑いを越えて、ビバルを警戒し始めているようだった。これ以上はまずいと考えたビバルは、あっさりと引き下がる。

「いや。どんな方がなったのかな、と興味があっただけです。────それじゃ、私はこれで」

 軽い口調でそう答えて、ビバルは管理課を出た。内心の焦りを表すように、足取りも荒々しくなる。

(くそっ。あんないい金蔓、逃してたまるか)


 その後、管理課の別の管理官を捉まえて、何とか聞き出したところによると────ルガレドの補佐官というのは、ルガレドの婚約者であることが判った。

 そう────あの我が儘で傲慢だという公爵家の次女だ。

 ビバルは、それを知って歯噛みする思いだった。

 きっと、その我が儘娘が、ルガレドに充てられた予算を自由に使うために、無理言って補佐官に就任したに違いない。

 自分の金蔓を横取りされた────そう思うと怒りが込み上げてくる。

(どうにかして、その女に接触しないと────)

 横取りされてしまったのは悔しいが────相手は、ろくに教育も受けていない世間知らずのお嬢様だ。

 会うことさえできれば、何とでも言い包めて────共犯に収まるなり、支配下に置くなりできると、ビバルには根拠のない自信があった。

 その女は、すでにルガレドの邸に住んでいるという。

 ルガレドは、確か────毎食、下級使用人用食堂で摂っているはずだ。

 その女も食堂で食べるのか、それとも食堂の不味い食事を拒否して自分で調達しているのかは知らないが、食事時が接触のチャンスだと考え────ビバルは昼食時、夕食時とルガレドの邸の近くで張っていた。

 しかし────どちらも現れずじまいで、結局その日は姿すら確認できずに終わった。



「よお、ビバル。金は持ってきたか?」

 皇城から行きつけの酒場に直行し、ビバルが遅めの夕食を摂っていると、ゲドがやって来て、勝手に相席に座った。

「それがよ、ちょっとトラブルがあってな」

 ビバルは軽い気持ちで切り出す。

 “賭けゲーム”を通してしか付き合いはないとはいえ、ゲドとは知り合って、それなりに長い。

 だから、ゲドは金の受け渡しを待ってくれる────当然のように、そう思っていた。


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