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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#5
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、ここは───部屋の改装だろう。

 ビバルは、いつも通り、先人が作成した同じような内容の申請書を取り出し────ほぼ丸写しして、さほど時間をかけずに、“ルガレド皇子の邸の改装を申請する”旨の書類を書き上げる。申請する金額は金貨15枚にしておく。

 後は────これを“管理課”に提出して許可をもらい、許可書を持って金を受け取りに行くだけだ。

 あたかもルガレド皇子本人が申請したように装って、偽の申請で許可をもらって、ルガレド皇子の予算から金を引き出す────管理官としての立場を利用した偽造と詐欺。これが────ビバルの手口だった。

 ルガレド皇子が、ビバルが偽造で使えそうな申請をしてきたときは、『許可が下りない』と言って却下してある。

 だから、ビバルは好きなときに自由に申請を偽造することができた。

(今年度も、あと2ヵ月ちょっとか。確か、予算の残りは金貨270枚だったよな。新年度で新しい予算がつく前に、出来るだけ引き出しておくか…。使い切らなきゃ勿体ない)

 ビバルはそんなことを考えながら────自分の所属する“申請課”を出ると、同じ階層にある同じ部署の“管理課”へと向かった。


「許可できません」
「は?」

 管理課でいつものように申請書を提出し────当然許可が下りるだろうと思っていたビバルは、顔見知りの管理官の言葉に耳を疑った。

 その管理官は少々生真面目過ぎるところがあり、融通が利かない奴なので、些細な不備でもあったのかと考えたが────以前、同じ文書を丸写ししたときは通ったことを思い出し、ビバルは顔を歪めた。

(嫌がらせかよ)

「…何故ですか?」
「ルガレド殿下の予算は、現在、この部署の管理下にはありません」
「……は?」

 ビバルは言われたことの意味がすぐには理解できず、間抜けな顔を晒す。

「ルガレド殿下の補佐官が、全てを管理しておりますので────こちらでは申請は受けられません」
「ルガレド皇子の補佐官……?」

 言葉を繰り返し────驚きに呆然としているビバルに、相対する管理官は眉を顰めた。訝しむ管理官に気づかず、我に返ったビバルは詰め寄る。

「ど、どういうことだ!?何で、ルガレド皇子に補佐官なんか────この俺に一言も断らず…!」

「いや、貴方に断る義務はないとは思いますが────この申請を受けたときに補佐官のこと、お聞きにならなかったんですか?
いえ────そもそも…、補佐官が管理しているのに、ルガレド殿下は、何故、貴方のところに────この部署に申請に来たんですか?」

 管理官の疑わし気な声音と表情に、ビバルは自分がへまをやってしまったことを悟る。

「あ、いや…。これ、実は、少し前に申請されたものでして。ルガレド
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