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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#4
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「おいおい…、その女、売るんだろ?勝手に傷つけるなよ」

 ザイドの罵声が知らない野太い声に遮られ────眼に入った光景に、ダムナは、ザイドに暴力を振るわれた恐怖も、頬と口の中の痛みも忘れる。

 エントランスの奥に、スキンヘッドの厳つい顔をした大柄な男が立っていた。後ろには、手下らしき男が3人ほど控えている。見るからにカタギではないと判った。

「あ、す、すいません、つい…。────それで、この女、いくらで売れますかね?」

 ザイドは、ダムナに向けるいつもの強気な態度とは打って変わって、弱気な表情を浮かべ猫撫で声で訊く。その態度は、はっきり言って情けなかった。

「良くて、金貨5枚というところだな」
「そ、そんな、もっと高くなりませんか?」
「器量も体型も良くないし、もう(とう)が立ってる。それに、人好きのするような愛嬌もない。これでは、ギリギリまで客を取らせたとしても、金貨5枚稼げるかどうかってところだな」

 ザイドとスキンヘッドの男の会話から、ザイドが借金の肩に自分を娼館に売るつもりなのだと悟って、ダムナは愕然とする。

 地下牢から出て絶望からも抜け出せたような気になっていたが────抜け出すどころか、より深く転がり落ちていっているような錯覚に陥った。

「この家を売り払った金額が、金貨28枚。この女の金額が、金貨5枚。借金返済には到底────届かないな…」

 スキンヘッドの男の声音が低くなり、すうっと雰囲気が冷たいものに変わる。

「ザイド────お前は、ドラテニワの鉱山送りだ。精々、働いて────きっちり返すんだな」
「そ、そんな…」

 ドラテニワの鉱山は、聖結晶(アダマンタイト)が採れる数少ない鉱山だが────過酷なことで有名だ。

 あそこに送られるくらいなら死んだ方がマシと言われているくらいで、自分から進んで行く者は滅多にいない。そのため借金奴隷や犯罪奴隷の償いの場として相応しく、大抵の犯罪者はそこに送られる。

 スキンヘッドの男の手下二人に取り押さえられたザイドは、みっともなく泣き叫びながら必死に暴れていたが、ダムナは、抵抗する気も起こらなかった。

 欺瞞を打ち砕かれた挙句、愛する男にも裏切られて────ダムナには、もう本当に何も残っていない。

 これから先待っているのは────何も手にすることができずに、ただ搾取されるだけの毎日だと、誰に言われることがなくとも解っていた。

「この5年、おこぼれに与ってきたんだろう。存分に────償え」

 ダムナは、スキンヘッドの男がザイドにそう囁いたことに気づかなかった。

 そして───借金の返済額である金貨94枚というのが、自分がルガレド皇子から掠め取った金額であることにも、気づくことはなか
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