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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#4
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許されると思っていた。例えルガレドが皇子だとしても、周りすべてが彼を軽んじているのだから、咎められることなどない────と。

(ああ、わたしは…、わたしは、どうして────こんなことをしてしまったんだろう…)

 そんな思いが、今更ながら込み上げてきた。

 ダムナのやったことは────盗みと同じだ。それも、相手は皇族。

 これは犯罪だと、普通に考えれば判ることなのに────何で、自分のやっていることが正当なことだと思ってしまったのか…。

 どうして────解雇されたことに腹を立て、文句を言おうなどと思ってしまったのか…。

 もう良くなりようがない自分の行く末に、ダムナは、がっくりと、その場に座り込んだ────


 あの後、執事服の男に兵士に引き渡されたダムナは、侍女服を脱がされ襤褸布のようなワンピースを着せられて、地下牢に入れられていた。

 罪状は、皇宮の正式な使用人でないのに、侍女服を着て皇城に入り込んでいた────というもの。

 冷静になれば、捕らえられて当然に思えた。ここは、皇王が住まう場所なのだ。

 一昔前なら平民で後ろ盾のないダムナでは縛り首でもおかしくない罪状だったが、現在は保釈金さえ払えば釈放されるとのことだった。

 だが、ダムナには保釈金を払ってくれる当てなどなく────ただ絶望しかない。

 泣く気力すらなく────地下牢の()えた匂いを断ち切るように、ダムナは顔を膝に埋めた。

 どれくらいそうしていたか────不意に、地下牢の扉が開かれた。

「出ろ。お前の保釈金が支払われた。もう帰っていいぞ」

 看守の言葉が信じられないまま、のろのろと重い足取りで牢屋を出る。そこには、ザイドがいた。

 まさか────彼が保釈金を払ってくれたのだろうか?

 ダムナと付き合っているのは金目当てでしかなく、無職で借金まで作ってしまったザイドが、まさかダムナを助けてくれるとは思いも寄らず────ダムナは、絶望していた分だけ喜びも大きく、ザイドに駆け寄った。

 だけど、ザイドの態度はダムナの思い描いたものとは違った。表情を落として、何も喋らずに、ダムナの腕を掴んで強引に歩かせる。

「ザ、ザイド?」

 ザイドは、返事をしない。

 ダムナがもがいても、どんなに話しかけても────腕を放すことなく、家に帰るまで黙り込んだままだった。

 玄関の扉を開いて中に入ると、ザイドは掴んでいた手を放し、いきなりダムナの頬を力を込めて打った。

 無職で何もしていないザイドの力は冒険者などよりは余程弱かったが、ダムナの口の中が切れるくらいには強く、口の端から血が流れるのを感じる。

「このバカが…!おかげで借金が増えちまったじゃねぇか!」

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