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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#3
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が込んでいって…」
「それで────いくらなの?」
「…金貨94枚」
「94枚…!?」
ダムナにそんな大金が払えるわけがない。
家を買うために貯金はすべて使ってしまったし、家を買ってからは貯金の必要がなくなり、給金を使い切るような生活をしていた。
「と、とにかく、明日、女官長に前借りできるか訊いてみるから」
「頼む!お前だけが頼りなんだ…!」
ザイドが、ダムナを抱き締める。
ザイドのその縋りつくような態度と言葉は、ダムナに優越感のようなものをもたらした。
やはり、ザイドには自分が必要なのだ────特別な存在なのだ、と。
単純なダムナは、さっきまでの絶望感を忘れて、何とかなるような気分になってしまった。
前借りできなかったときは、ルガレド皇子に払わせればいい────ふっとそんな考えが浮かび、ダムナは醜い笑みを浮かべた。
翌日─────
ダムナは、1ヵ月ぶりに侍女のお仕着せを纏って、皇城に向かった。
給金の前借りについて女官長に相談したかったので、いつもより少し早めに向かう。
顔見知りのやる気のない門番は、ダムナには名前を訊くこともせず、あっさり通してくれた。
ダムナは、迷うことなく皇宮の使用人用エリアへと向かい、給金を配る準備をしている女官長を見つけ、歩み寄っていった。
「女官長さま」
「ダムナ?…あんた、何で侍女服なんか着て、こんな所にいるの?」
女官長が訝し気に、顔を
顰
(
しか
)
める。
「え?」
ダムナは、女官長の言葉の意味が解らず、声を漏らした。
自分が侍女服を着て、給金日にここにいることは別におかしなことではないはずだ。
「だって、今日は給金日だから…」
「は?何言ってるの。あんた、かなり前に解雇されたって聞いてるわよ。侍女どころか、この皇宮の使用人ですらないんだから、その侍女服を返して、さっさとここから出て行きなさい」
「え…?」
女官長に言われたことが、すぐには呑み込めなかった。
呑み込めて初めに浮かんだことは────何故、という疑問だった。
自分の怠慢さが原因で解雇されたとは思いも浮かばず、まるで理不尽な目に遭ったかのように、女官長に詰め寄る。
「ど、どういうことですか…!?」
「どういうって────あんた、一度も侍女としての仕事していなかったんでしょう?解雇されても当然じゃないの」
「ちゃんと、してました!大体、何だって今更…」
ダムナには、自分が嘘を吐いていることも、不合理な発言をしていることも自覚がなかった。
「…あんた、知らないの?ルガレド殿下、この間の成人の儀で成人されたのよ。だから、もう殿下は、自分で使用人を雇うことも解雇す
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