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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#3
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のこと知らないの?」

 特に親しい者がなく噂話に疎いダムナは、ルガレド皇子を取り巻く状況を知らなかった。

「どういうこと?」
「ちょっと前に、ファルリエム辺境伯家が取り潰しになったことは知っているでしょ?あれ、ルガレド皇子を生んだセアラ側妃の実家だったのよ。つまり、ルガレド皇子は後ろ盾を失ったってわけ。しかも、ルガレド皇子って皇妃様に嫌われてるから、貴族たちは関わろうとしないらしいし」

「それに、知ってる?ルガレド皇子って、顔に大きな傷があってすごく醜いんですって。これまでルガレド皇子に仕えていた使用人が嫌がって出て行っちゃったから、新しい使用人をつけようとしたみたいだけど、侍女もメイドも誰もなりたがらなくて、わたしたち洗濯婦にお鉢が回って来たってわけ」
「それでね、女官長に侍女に相応しい者がいるか訊かれたときに、わたしたち、みんなしてあんたを推薦したの。わたしたちは、皇妃様に疎まれている皇子の世話なんてしたくなかったし」

「あんた、正直、顔も良くないし、誰も嫁になんてもらってくれないだろうから、ルガレド皇子に妾にでもしてもらったらいいんじゃない?」

 二人の意地悪く響く笑い声を振り切るように、ダムナは食堂から飛び出した。


 その翌日、ダムナは女官長に、ルガレドの邸の前まで連れて行かれた。

 皇城の端に建つその邸は、さっき通り過ぎた他の妃たちの邸に比べたら、小さくてみすぼらしく感じた。

「ここが、ルガレド皇子の邸です。嫌がらず、きちんと世話をするように」

 女官長は、邸の中に入ってルガレドにダムナを引き合わせることすらせず、ダムナを残して戻ってしまった。

 ダムナは、女官長にも洗濯婦の元同僚たちにも、ふつふつと怒りが湧いてくるのを感じた。

(どうして、わたしがこんな目に合わなくちゃいけないの…!?)

 醜い皇子の世話なんてしたくないのに侍女にされて、そのとばっちりで皇妃に疎まれるかもしれないなんて理不尽だ。

 何が『嫌がらず、きちんと世話をするように』────だ。

(もう、会わずに帰っちゃおうか…)

 聞けば、ルガレド皇子の世話を任されるのは、ダムナ一人だという。ダムナが侍女の仕事をしなくても、ばれることはないだろう。

 ルガレド皇子が何か言ったとしても、疎まれている皇子の言うことなんて誰も聞くことはないはずだ。

 それがとてもいい考えに思えたダムナは、ルガレドの邸に入ることなく踵を返した。

 そして────その後も、ダムナは一度としてルガレドの邸に入ることはなかった。


 それから、ダムナは、部屋に籠るか人気のないところで時間をやり過ごし、時間になると食堂と浴場に行くというサイクルが日常となった。

 上級使用人用食堂に行けるよう
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