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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#2
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─そして、名前を聞くことも記録をとることもせず、ラムルを通した。

 ガビトメル商会とは、ベイラリオ侯爵家お抱えの商会の一つだ。

 門番は、このガビトメル商会を含むベイラリオ侯爵家お抱えの商会の名を出されたときは、追及しないように厳命されているのだ。

 これは、先代ベイラリオ侯爵の施した改悪の一つで、追及されては都合の悪いものを皇城内に運び入れるための措置なのだ。そう────例えば毒物や暗殺者など。

 8年前の時点から、ラムルもカデアも────それから、ジグとレナスたち“影”も、単身で皇城を出入りする場合は、これを逆手にとって出入りするようにしていた。

 おそらく、ルガレドの名を出せば、入ることも出ることも許可されないだろうからだ。

 正直、こうやって招き入れられた暗殺者にセアラを殺され、ルガレドの左眼を抉られたことを考えると、腸が煮えくり返る思いだが────今は我慢して、利用するしかない。


 ラムルが邸に戻ると、ルガレドとリゼラは、下級兵士用調練場での鍛練と朝食を終え、地下調練場でジグやレナス、カデアと鍛練をしているところだった。

「おはようございます、旦那様。遅くなりまして、申し訳ございません」
「いや。俺たちが出かけてしまう前に用事を済ませる必要があったと、リゼから聞いている。ご苦労だったな。用事は無事、済んだのか?」

 なるほど、とラムルは思う。リゼラのその言い方ならば────嘘を混ぜることなく、早朝という時分の不自然さも感じさせず、かつ用事自体もラムルの通常の仕事の一環のような印象を与える。

「はい。無事、済ませてまいりました」

 リゼラの機転に舌を巻きつつ、ラムルは答える。

「ご苦労様でした、ラムル」

 ラムルの答えはリゼラに向けた報告でもあると察したようで、リゼラも労いの言葉をくれた。

 ルガレドがジグとレナス相手に鍛練を再開したのを横目に、ラムルは、カデアとの鍛練に戻ろうとしているリゼラに声をかけた。

「そういえば、リゼラ様。古本屋の主が、リゼラ様によろしくとのことでございました」
「…ああ、ラムルもあの古本屋、行くのですね。今度、ついでのときにでも、お遣いを頼んでも良いですか?」

 ラムルの言葉に、リゼラは一瞬だけ間を見せたが、すぐに言葉を返してきた。ノヴァの予想通り────リゼラはその言葉だけで、その意味も意図も理解したようだ。

「勿論でございます」

 ラムルは自然と笑みを浮かべ、自分の女主人に向かって優雅に一礼した。

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