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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#1
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との方が多くて、こういった怒りを見せるようなことがなかったな。
「ビバルやダムナのような────ああいった輩は正直大嫌いですし、レド様にしたことを思えば、余計に嫌悪しかないですからね」
どちらも、イルノラド公爵家の家令バセドや使用人たちを思い出させて、考えるだけで嫌な気分になる。
私の態度が意外だったのか、ジグもレナスも驚いたようなしぐさを見せた。自分の表情も声音も、冷たいものになっている自覚はあった。
「もしかして…、幻滅させてしまいましたか?」
軽い怒りは見せたことはあったかもしれないけれど、ここまで冷たい感情を見せるのは初めてだし────たとえ相手が最低な人間だったとしても、誰かを嫌ったり悪く言うというのは、やっぱり見ていて気持ちのいいものではないよね。
でも、ジグとレナスに幻滅されてしまうのは、結構────いや、かなり悲しいかもしれない。
「いえっ、そんなことはありませんっ!」
レナスが、慌てて首を振る。ああ、気を使わせちゃったかな。
「幻滅などしておりません。貴女は…、お怒りになった表情も、とても綺麗だと────見惚れていただけです」
「え?」
ジグに真剣な表情でそんなことを言われて、私は虚を衝かれた。
「…ジグ、てめぇ────いっつも、いつも…っ、そうやって────いいところばっか持っていきやがってっ」
レナスが、こめかみに血管を浮き上がらせて叫ぶ。
「別にお前だって言えばいいだろ」
「言えるかっ」
あ、何だ────やっぱり気を使ってくれただけなんだ。
ジグがレナスに軽く返すのを目にして、さっきのジグの言葉は本気ではなく────私に気を使ってのものだと判断する。
そう解って────ちょっとほっとした。レド様以外の男性に綺麗だなんて言われたことがなかったので、少しだけドキリとしてしまったのだ。
それにしても────ずっと組んでレド様の護衛をしてきたせいなのか、この二人は本当に仲がいい。
兄弟のような、親友のような────そんな二人のじゃれ合いが微笑ましくて、私は先程までの怒りも忘れて、思わず笑みを零した。
自分たちが笑われていることに気づいたのか、ジグとレナスがじゃれ合いを止め、眼を見開く。
「あ…、ごめんなさい。ジグとレナスはすごく仲がいいなぁって思って…。
ふふ、そういう姿、あまり私には見せてくれないから、珍しくて────」
二人とも、私の前ではいつも畏まっているし。
「随分────楽しそうだな」
不意に凍てついた声がして、ジグとレナスの表情がぴしりと音がしそうなほど固まった。
ジグとレナスの背後に、レド様が立っていた。何故か楽しそうな様子のカデアがその後ろにいる。
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