暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十三章―愚か者たちの戯言―#1
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
との方が多くて、こういった怒りを見せるようなことがなかったな。

「ビバルやダムナのような────ああいった輩は正直大嫌いですし、レド様にしたことを思えば、余計に嫌悪しかないですからね」

 どちらも、イルノラド公爵家の家令バセドや使用人たちを思い出させて、考えるだけで嫌な気分になる。

 私の態度が意外だったのか、ジグもレナスも驚いたようなしぐさを見せた。自分の表情も声音も、冷たいものになっている自覚はあった。

「もしかして…、幻滅させてしまいましたか?」

 軽い怒りは見せたことはあったかもしれないけれど、ここまで冷たい感情を見せるのは初めてだし────たとえ相手が最低な人間だったとしても、誰かを嫌ったり悪く言うというのは、やっぱり見ていて気持ちのいいものではないよね。

 でも、ジグとレナスに幻滅されてしまうのは、結構────いや、かなり悲しいかもしれない。

「いえっ、そんなことはありませんっ!」

 レナスが、慌てて首を振る。ああ、気を使わせちゃったかな。

「幻滅などしておりません。貴女は…、お怒りになった表情も、とても綺麗だと────見惚れていただけです」
「え?」

 ジグに真剣な表情でそんなことを言われて、私は虚を衝かれた。

「…ジグ、てめぇ────いっつも、いつも…っ、そうやって────いいところばっか持っていきやがってっ」

 レナスが、こめかみに血管を浮き上がらせて叫ぶ。

「別にお前だって言えばいいだろ」
「言えるかっ」

 あ、何だ────やっぱり気を使ってくれただけなんだ。

 ジグがレナスに軽く返すのを目にして、さっきのジグの言葉は本気ではなく────私に気を使ってのものだと判断する。

 そう解って────ちょっとほっとした。レド様以外の男性に綺麗だなんて言われたことがなかったので、少しだけドキリとしてしまったのだ。

 それにしても────ずっと組んでレド様の護衛をしてきたせいなのか、この二人は本当に仲がいい。

 兄弟のような、親友のような────そんな二人のじゃれ合いが微笑ましくて、私は先程までの怒りも忘れて、思わず笑みを零した。

 自分たちが笑われていることに気づいたのか、ジグとレナスがじゃれ合いを止め、眼を見開く。

「あ…、ごめんなさい。ジグとレナスはすごく仲がいいなぁって思って…。
ふふ、そういう姿、あまり私には見せてくれないから、珍しくて────」

 二人とも、私の前ではいつも畏まっているし。

「随分────楽しそうだな」

 不意に凍てついた声がして、ジグとレナスの表情がぴしりと音がしそうなほど固まった。

 ジグとレナスの背後に、レド様が立っていた。何故か楽しそうな様子のカデアがその後ろにいる。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ