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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十二章―忠臣の帰還―#5
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ーを抜ける手続きや、孤児院を引き払う準備があるため、アーシャは後日、改めて迎え入れることになった。

 アーシャの侍女としての指導は基本的にはカデアにしてもらうつもりだが、ヘアメイクや化粧など───身嗜みについては、ロウェルダ公爵家で修行させてもらえるよう、レド様が交渉してくれた。

 カデアは皇都を離れて長い。その手のことには流行があるので、ロウェルダ公爵家にお願いした方がいいだろうという、カデア本人の言もあってのことだ。


「レド様、アーシャのこと、ありがとうございます」

 夕食が終わって、夜仕様のサンルームのソファに座ったところで、私はレド様にアーシャのことを切り出した。

「いや。リゼの侍女を探したいと思っていたところだったから、ちょうど良かった」
「ですが…、やはり、アーシャは、私が───ファルリエム子爵の使用人として雇います」
「もう俺の使用人として雇うことに決まっただろう。諦めろ、リゼ」

 何故か、レド様が楽しそうに言う。

「でも、アーシャは私の侍女ですよ?私が雇うべきではないですか?」
「いいや。リゼは俺の婚約者だ。自分の婚約者の侍女を、俺が手配し───雇うのは何らおかしいことではない」
「それ…、婚約者じゃなくて────妃の場合ではないですか?」

 この国の王侯貴族で、私たちのように、婚前から一緒に暮らすケースは稀だ。レド様の言うような習慣があるはずがない。

「同じようなものだろう。そう遠くないうちに、リゼは俺の妃に───妻になるのだから」

 レド様は私の頬に右手を這わせて、微笑んだ。それが────とても嬉しそうな笑顔で、私が妻となることを心待ちにしてくれているのだと判って、頬に熱が上る。

「だけど───アーシャの件は、本当に良かった。結婚する前に───辺境に行かされる前に、リゼの味方になってくれる者が、一人でも多く欲しかったんだ」
「レド様…」
「アーシャの───リゼを護りたいという決意は本物だ。神眼で見ても、澄んだ輝きを纏っていた。俺ではカバーできないところで、きっとあの子はリゼの支えになってくれる」

 レド様が───ジグとレナスと気安いやり取りを交わすのを眼にして、私も同じようなことを考えたことを思い出す。

 ああ…、私たちは、お互い同じようなことを思いやっているのだな───と、嬉しくなると同時に、少しおかしくなった。

 私は───私の頬に添えられたレド様の右手に自分の左手を重ねて、笑みを零す。

 私がレド様を想うように────レド様も私を想ってくれている。
 例え、この先がまだまだ前途多難だとしても────こんなに幸せなことはない。

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