暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十二章―忠臣の帰還―#4
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 4m近い巨体を持つオークが───オークにしては俊敏な動きで腕を振り回し、周囲の木々を薙ぎ倒す。

 オークは、異常なまでに発達した牙が邪魔して、口を閉じていられないらしく、涎に塗れた硬そうな舌が、開いたままの口から垂れ下がっている。

「あれは、魔獣化しているな…」

 レド様が、変異オークを───おそらく神眼で()ながら、呟いた。
 私も【(アストラル)(・ヴィジョン)】で視ながら、頷く。

 レド様に討伐していただくとして─────どうしようかな。

 普通にいつもの両手剣で討伐するなら、あの程度の魔獣、レド様ならきっと造作もない。

 だけど、せっかくだから、何かレド様の経験になるようなことをしたい。

 あ───そうだ。

「レド様、せっかくですし、弓を(ため)してみませんか?」
「弓を?」


 レド様は、ファルリエム辺境伯に師事して、ファルリエム辺境伯家に伝わる武術を修めている。

 その武術の中に弓術もあって、レド様は弓も扱えるのだけど、皇子という立場ゆえ、これまで実戦で使ったことはないらしい。

 鍛練で験したところ───レド様の弓術の腕前は剣術に劣らない。このまま使うことがないのは勿体ない。


 レド様が、【遠隔(リモート・)管理(コントロール)】で専用の弓を取り寄せる。

 レド様の弓は、私のものよりも一回りほど大きく、弦も硬く張っている。使う矢も通常よりも大きくて太い。

 この弓も矢も、膂力(りょりょく)があるレド様だからこそ、扱うことができる代物だ。

「あの変異オークは、魔力で皮膚を強化しています。だから、眼を狙ってください。眼から脳を貫いてください」
「解った」

 レド様は私の言葉に頷くと、弓を構えた。すかさず矢が現れ、レド様は右手で矢を掴むと、番えた。

 後は────レド様のタイミングに任せる。

 不意にレド様が、矢羽根と弦を放った。矢が風を切って、物凄い勢いで飛んでいく。

 レド様の狙いは的確で、矢は変異オークの眼球に命中し、眼より大きい矢羽根が引っかかるまで、深くのめり込んでいった。

 変異オークは断末魔を上げることなく、ただ───その重量を感じさせないあっけなさで、倒れ込んだ。さすがに、接地した瞬間は、地響きが上がり、地面が抉れて土埃が舞い上がったが。

「一撃…」
「矢だけで魔獣を屠るとは…」

 ジグとレナスが、呆れたように言葉を零す。

 まあ、これには私も驚きですけども…。でも、レド様だもの。これくらい、当然のような気もしてしまう…。

 念のため、【(アストラル)(・ヴィジョン)】で確認する。うん、絶命してますね…。

「これは、ギルドに援助要請しなけ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ