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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十二章―忠臣の帰還―#3
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だ考えの段階ですが…、孤児院の厨房を使わせてもらうのはどうでしょう?」
「孤児院の?」
「はい。【拠点(セーフティベース)】として登録する予定ですし、【移動門(ゲート)】も設置予定ですから、行き来も自由になります。
それが───今のところ最善ではないかと思います」

 院長先生には、使っていない棟の一つを拠点として使ってもいいと言われている。状況によっては、そこにカデア専用の厨房を造ってもいいかもしれない。

 勿論、造るのは私だ。そんなに大きなものを造ってみたことはないけれど、孤児院の厨房を模倣すれば、出来るのではないかと思っている。

 換気だけ古代魔術帝国の技術を用いれば、建物の構造を変えて煙突を設置する必要もないし。

「リゼは頼りになり過ぎるな…」
「レド様?」
「俺は────リゼに頼り切っているような気がする」

 レド様が立ち止まって私の方を向くと、眉尻を下げた。

 私もつられて、足を止める。情けなさそうな表情をするレド様に、私は首を傾げた。

「そんなことはないと思いますが…」

 レド様は、私の腰に両手を回し抱き寄せると────私の額に自分の額をくっつける。

「俺は…、いつもリゼに何かをしてもらってばかりだ」

「私だって、レド様にしてもらっていることや────いただいたもの、たくさんありますよ?」
「そうか?」
「ええ、そうです。大事なお邸に住まわせてくれて、大事なお部屋を使わせてくれて、大事なお母様の形見を譲ってくれて、食費を出してくれて、服代まで出してくれて────結婚の約束をしてくれて、それから…」

「それから?」
「それから…、今だって────こうして、私の傍にいてくれているじゃないですか」
「そんなの…、俺がリゼの傍にいたいだけだ」
「ふふ、それが嬉しいんです。レド様が…、私の傍にいたいと思ってくれることが────傍にいてくれることが」
「リゼ…」

 レド様が額を離し、顔を近づけてきたので────私はそっと瞼を閉じた。

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