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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十二章―忠臣の帰還―#1
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こなしが見るからに素人のそれではなく、周囲には元冒険者だと思われていたけれど、私には冒険者のものとはどこか違うような気がしていた。
デアさんも同様だ。デアさんは一見───栗色の髪をひっ詰めて項でお団子にしている、ちょっとぽっちゃりとした、どこでにでもいそうな優し気なおばさんに見える。
でも、体格の割に身のこなしが軽く、時折見せる鋭い視線が、どうしても普通の中年女性とは思えなかったのだ。
「レド様を────フィルト王国経由で逃すつもりだったんですか?」
私が問いかけると、ラルさんもデアさんも、にっこりと微笑んだ。
「さすがです、リゼさん」
「ええ。その通りです」
亡命するとしたら、ドルマ連邦かアルドネ王国しかない。
ガドマは共和国とは名ばかりで排他的だし───ミアトリディニア帝国なんて以ての外だ。フィルト王国は弱小国で、この国からレド様を差し出すよう要求されたら従うしかないだろうから、通過するだけならともかく亡命するのは危険だ。
アルドネは国境を接していないから直接向かうことはできない。
ドルマとの国境は、現在、ベイラリオ侯爵家門の貴族が統治しているため、避けるしかない。
そうすると────自ずと選択肢は限られてくる。
そこまで考えて、不意に閃く。
「もしかして───あの依頼…、ラルさんとデアさんが絡んでいました?」
“あの依頼”とは、私がラーエに向かうことになった依頼のことだ。
“ベルネオ商会”というところから受けた依頼で、ラーエまで荷物と従業員を護衛して欲しいとのものだった。サヴァルさんに照会したら、取引した限りでは信用できる商会とのことだったので、引き受けたのだけど────正直、腑に落ちなかったのだ。
ラーエと国境を接するフィルト王国は、小さいが歴史は古く、単に“古王国”とも、“聖王国”とも呼ばれている。
この国は、何故か魔素が他の地域と比べて極端に少なく、魔物や魔獣の出現は稀なのだそうだ。
その代わり、魔素を多分に含んだ鉱石は採れない。魔物に荒らされることなく農業ができるので、農作物が唯一の特産となるのだが、いかんせん国土が小さく、他国に輸出できるほどではない。つまり、外貨が稼げないのだ。
だから、現在のフィルト王国は、他国と何かを輸出入するということがほとんどなく、ほぼ自給自足のみで成り立ち、ちょっとした鎖国状態にある。
フィルト王国に輸出するのでもなく、あの規模の荷物を、ラーエという小さな町に運ぶというのも不自然だったし、時折、現れた盗賊も、何と言うか妙な感じだったのだ。
言葉の訛りもまちまちで、色々な所から連れてきたような─────
「あれは…、私を試していたというより────レド様を逃がす
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