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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十二章―忠臣の帰還―#1
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移《テレポーテーション》】で街に出た。
レナスたちがいる宿屋『月光亭』は皇都の中でも老舗で、冒険者になる以前、好意でお手伝いをさせてもらったことがある。
「こんにちは、おかみさん」
月光亭の古いけれど品の好い扉を潜ると、馴染みの恰幅のいいおかみさんが目に入り、私は声をかけた。
「おや、リゼ。どうしたんだい?」
「実は、この宿のお客さんに、冒険者として依頼を受けまして。部屋番号も聞いているので、会いに行っても良いですか?」
「そうかい。いいよ。行っておいで」
おかみさんは、あっさりとそう言ってくれ───私を信頼してくれているのだと思うと、嬉しくなった。
「ありがとう。それでは、お邪魔します」
勝手知ったる宿屋だ。迷うことなく、客室が並ぶ二階へと上がる。
宿に泊まるのは、大抵、皇都に店を持たない商人か、冒険者なので、今時分は部屋を空けている者も多いようで深閑としていた。
私は、予めレナスから聞いていた番号がつけられた扉まで、ちょっと緊張しながら歩いて行く。
ラムルさんとカデアさんか…。話を聞く限り、二人はレド様にとっては親のような存在みたいだ。
どんな人たちだろう。レド様にとって大事な人たちだ。できれば私も仲良くしたい。
「リゼラです。迎えに来ました」
ノックをして告げると、直後に扉が開いて、レナスが出迎えてくれた。
「リゼラ様、ご足労をかけて申し訳ありません」
「いえ、気にしないでください」
レナスに応えてから、その背後に視線を移すと─────
「あれ…、ラルさんとデアさん…?」
そこにいたのは────以前、冒険者としての仕事で訪れた町で知り合った夫婦だった。
「そうか…、ラムルとカデアは、ラーエの町で宿屋をしていたんだったな。冒険者であるリゼラ様が利用したことがあっても、おかしくはないか…」
私がラムルさんとカデアさんを見知っていることに驚いたレナスは、すぐに納得したように呟く。
レナスの言う通り────私が知る“ラルさん”と“デアさん”は、フィルト王国との国境の町ラーエで宿屋を開いていた。
とある依頼でラーエを訪れた際、ラルさんとデアさんが経営する宿を紹介され、お世話になったのだ。
「お久しぶりですね、リゼさん」
「お元気そうで何よりです、リゼさん」
二人は、変わらない笑顔を浮かべ、屈託なく言う。
「お久しぶりです、お二人とも。────お二人が…、ラムルさんとカデアさんだったんですね」
だけど、こうして二人の素性を知ってみれば、諸々のことが納得できる。
ラルさんは───焦げ茶色の短髪を後ろに撫で付け、同じ色の口髭を生やした、胸板の厚い大柄な男性だ。
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