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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十章―忠誠―#3
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に怒るくらい────私を想ってくれているのだ。

 レド様の癇に触れるようなことをしてしまったこと───それから、ジグとレナスの食事事情に思い当たらなかったことを、きちんと反省しなければならないと思うのに────どうしても、先程のレド様の表情や声音、それに口づけられた感触を────さらには、応接間での出来事まで思い出してしまって────そればかりが頭を廻り、何も考えられない。

「リゼ、何やってるの?」

 ネロに不思議そうに問いかけられるまで、私は両手で顔を覆い、ひたすら身悶えていた…。


◇◇◇


 翌朝─────

 私は寝坊することなく、いつも通りの時間に厨房へと向かった。

 今日の朝食は昨日トンカツを作った時点で、カツサンドにしようと決めていた。実は昨晩───あの後にもう作ってあった。

 レド様と作りたいとは思ったけれど、きちんと話して謝りたいので、そうすると朝食を作っている時間はないかもしれないと考えたからだ。

 レド様は────いつも通りに来てくださるだろうか…。

 もし、私に会いたくないと思われていたらどうしよう────そんな不安が込み上げ、扉の方を見ていられなくて私は俯き、無意識に周囲の気配を探るのを止めていた。

「…リゼ」

 躊躇いがちに名を呼ばれ、私は弾かれたように振り向く。

 そこには────不安げな表情をしたレド様が佇んでいた。レド様の表情や態度に嫌悪感や怒りは見えなくて、私は思わず安堵の息を吐いてしまった。

「レド様…」

 レド様がいつも通りに来てくれたことが嬉しい。

「リゼ…、昨日は、その…、すまなかった」

「いえ…、謝るのは私の方です。私…、昨日の夕飯は自分で用意した材料ばかりだったので…、だから、ジグとレナスにもおすそ分けしようって安易に思ってしまって────二人を夕食に呼んでもいいか、一緒に食べているレド様にも許可をとるべきだったのに────ジグとレナスは───私たちの大事な護衛だから呼んでも構わないだろうと勝手に考えて────レド様にしてみれば、婚約者である私に、二人でとるはずだった食事に勝手に他の男性を呼ばれたのだから────レド様が怒るのは…、当然です」

 ああ、これではただの言い訳だ。レド様を前にしたら、言おうと決めていた言葉が吹き飛んでしまって、言いたいことが上手く言い表せない。

「本当に…、ごめんなさい…」

 謝罪すると言いながら、まだ伝えていないことに気づいて、言葉を絞り出す。

「いや───違う。リゼが悪いんじゃない。悪いのは、俺なんだ。俺が勝手に───ジグに嫉妬しただけだ。あれは完全に八つ当たりだったんだ…。すまなかった、リゼ」

 言葉が出てこなくて、私はただ首を横に振る。


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