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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第十章―忠誠―#1
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 だけど、私を何より大事だと言われて────こんなの、嬉しくならないわけがない。

 レド様をいつもに増して愛おしく感じて────込み上げる感情に突き動かされて、私は目の前にいるレド様に口づけた。

「…っ」

 私の一瞬の口づけに、レド様は目を見開いて息を呑む。その表情が契約の儀のときみたいで、思わず小さな笑みが零れた。

 レド様の淡紫の瞳が揺らめいたように見えた次の瞬間には、レド様に口づけられていた。

 先程の自分から触れた一瞬では感じ取れなかった────その温かく柔らかい感触に驚いて、私は目を見開く。

 レド様は、角度を変えながら、何度も私に口づける。私は目を開いていられなくて、いつの間にか瞼を閉じて、レド様の唇の感触とお互いの吐息の熱さだけを感じていた。

 長い口づけが途切れると、レド様にきつく抱き締められた。私は火照った顔を見られたくなくて、レド様の広い胸板に額を押し付ける。

「リゼ…、あまり煽らないでくれ。我慢できなくなる…」

 レド様の熱のこもった声音と溜息が耳を掠めて、私はますます顔を上げられなくなってしまった。



「ああ───だが、良かった…」

 レド様が、心底安堵したように呟く。

「…何がですか?」
「いや、リゼが真剣な表情で相談があるというから────何だか…、夜会のときのことを思い出してしまって────婚約を解消したいなどと言われたらどうしようか、と…」

 ええっ?────だから、さっきレド様は硬い表情をしていたの?

「そんなこと言うわけないじゃないですか」

 思わず、憮然とした声で返してしまう。

 レド様は────私がそんな簡単に(ひるがえ)ってしまうような決意で、求婚を受け入れたと思っているのだろうか。

「…悪い。リゼの気持ちを疑っているわけではないんだ。ただ────」

 顔を上げると、レド様が叱られた子犬のようにしょげている。何だか物凄く可愛くて、私は思わず笑みを零してしまった。

「まったくもう…、仕方ないですね。あのときのこと、そんなにショックだったんですか?」
「当たり前だろう。俺はリゼと結婚できると思っていたんだ。それなのに、リゼの方はそんなつもりは全然なかったと知って、俺がどんなにショックだったか────」

 レド様が悲痛な表情で語り始める。

 どうもトラウマになってしまったらしい。しばらく、応接間を使うのも控えた方がいいかもしれない…。

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