暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第九章―才能と価値―#5
[1/4]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話

 孤児院を出た後、冒険者ギルドに寄って不要な素材を売却し、街でちょっと買い物をしてから、ロウェルダ公爵邸へと戻ると、授業を終えたらしいレド様が応接間で寛いでいた。

「お帰り、リゼ」

 レド様は私に気づくと、立ち上がって出迎えてくれた。

「ただいま戻りました、レド様」
「ケガはないか?」

 レド様は私の頬にその大きな右手を添え、私の顔を覗き込んで少し心配そうに訊く。レド様に気にかけてもらえたのが嬉しくて、私の口元が緩んだ。

 レド様の右手に自分の左手を重ねて、答える。

「心配してくださってありがとうございます、レド様。大丈夫です、傷一つ負ってはいません。これでも、Sランカーですから」

≪レナス?≫
≪は。オークの集落とグレイウルフの群れ、それから四足型、鳥型の魔獣に遭遇しましたが、リゼラ様はすべて、一度の反撃すら許さず、一刀の下、屠っております。かすり傷一つ、負ってはいないはずです≫
≪そうか。ご苦労だったな≫
≪ありがたきお言葉≫

 レド様は物凄く心配性のようだ…。

 まあ、でも、逆の立場なら、私も同じことをするような気がする。


「リゼ?お帰りなさい」

 シェリアの声がして、我に返る。

 振り向くと、シェリア、カエラさん、ロルス、ロイド、ロドムさんがいて、皆、何だか生温かい眼をしてこちらを見ている。

 うぅ、レド様しか目に入っていなかった…。

「た、ただいま、シェリア」

 レド様が、私の腰を抱き、ソファまでエスコートしてくれる。

 嬉しいけど、これは、少しというか───かなり恥ずかしい。レド様がとても嬉しそうにしているので、余計に顔が熱くなる。

 レド様と並んでソファに座り、顔を上げると、皆の顔が生温かい眼を通り越して、微笑まし気になっている。く、いたたまれない…。

 すかさず、カエラさんが私の前に淹れたてのお茶を置いてくれる。

「リゼラ様、ただいまラナさんの許にサヴァル様がいらしておりまして、リゼラ様にご用事があるとのことですので、こちらにお呼びしてもよろしいでしょうか」

 さりげなく近寄っていたロドムさんが、訊いてくる。

「サヴァルさんが?」

 サヴァルさんは、このロウェルダ公爵家御用達にして、私とも懇意にしてくれている商人だ。

 レーウェンエルダ出身ではあるが、近隣諸国にも手を伸ばす、押しも押されぬ大商人なのだ。その功績により、アルドネ王国では男爵位を叙爵されているくらいだ。

 私がSランカーになる際、推薦人の一人を引き受けてくれた人でもある。

「勿論です。皆さんさえ良ければ、こちらにお通ししてください」


◇◇◇


「皆さま、ご歓談中に失礼いたします。────お忙しいとこ
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ