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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第九章―才能と価値―#5
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きは、高位ランクの冒険者や王侯貴族の間にしか出回っていないらしい。
「リゼが身に着けているその装備も、魔玄だよな?」
「ええ、そうです」
今の私は、狩りに行ってくるにあたって、冒険者としての装備を身に纏っていた。
編み上げタイプのビスチェアーマーに、立ち襟のついた七分袖のアームボレロ、それにグローブ。ビスチェアーマーと揃いの太腿半ばまである編み上げタイプのサイハイブーツに、ショートパンツ。それから、クロスするように腰に巻いた2本のベルト。
すべて、魔獣の血で染め上げた鞣革で造られている。
「これらもすべてリゼが…?」
「はい。魔獣や魔物を自分で狩って、血も鞣革も調達して、自分で染めれば、仕立て代だけで済みますから」
「もしかして、いつも着ているジャケットやショートコートも?」
「はい」
「そうなのか…。リゼがSランカーだからこそ手に入れられたのだと思っていた。まさか───リゼが魔玄の作製者だったとは────」
「リゼラ様は簡単に仰っておりますが…、魔物や魔獣の血を全て持ち帰ることすら、普通は難しいのですよ。血抜きは出来ても、その血を全て集めて瓶に注ぐのは大変なのですから。魔物や魔獣より大きな
盥
(
たらい
)
みたいなものを持っていければ出来るかもしれませんが、そんなことは実質不可能です。
瓶を持って行くだけで、無駄にすることなく全ての血を持って帰って来れるのは、リゼラ様くらいなものです」
サヴァルさんが口を挟む。
「リゼは、もっと自分の才能について自覚した方がいい…」
レド様が、ちょっと呆れたように息を
吐
(
つ
)
く。
レド様はそう言ってくれるが、私にはそんな大層なことには思えない。結局のところ魔法の力押しだし。
「ですが、レド様。これは結局、私しか出来ないのですよ?他の人でも出来るように技術を確立し、それを広められてこそ、才能だと思います」
私がそう返すと、何故か水を打ったように、一瞬、周囲が黙然となった。もしかして、偉そうなことを言ってしまった?
「…リゼラ様の仰ることも確かでしょう。それも才能の一つです。
ですが────私は、リゼラ様がなさることも才能あるがゆえのことだと思いますよ」
沈黙を破ってそう言ったのは、サヴァルさんだ。サヴァルさんは残念そうに言葉を続けた。
「リゼラ様は、素質は十分にあるのに、商人には向かない方ですね。
実を申せば、リゼラ様には私の息子の妻になっていただけたらと思っていたのですが────どちらにせよ、無理そうですね」
私の肩を抱き凍てついた眼で自分を睨むレド様を見て、サヴァルさんは苦笑を浮かべる。そして、一言付け加えた。
「貴女には────皇子妃の方が向いているようです」
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