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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第九章―才能と価値―#5
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ろを申し訳ございません、リゼラ様」
サヴァルさんは、一見するとちょっとふくよかな気の好いおじさんだけど、中身はかなり強かな商人らしいお人である。
私のことは『リゼラさん』と呼んでいたが、私が叙爵したと知ってからは『リゼラ様』と呼ぶようになってしまった。
「いえ、何かご用とのことでしたが…」
「大したことではないのですが。まずはご報告ですね。こちら、今回分の“懐中時計と鋏の売り上げ”と、“リゼラ様の取り分”となります」
サヴァルさんに、数字の書かれた書類を渡される。レド様が隣で、驚いたような声を上げた。
「“懐中時計と鋏の売り上げ”…?」
「ルガレド皇子殿下は存じ上げないのですか?」
サヴァルさんが伺うように、私を見る。そういえば、レド様には話していなかったかもしれない。
「殿下にお話ししても?」
「ええ。単に、まだお話ししていなかっただけですから」
サヴァルさんが、レド様に向き直る。
「殿下は、現在、世間に出回っている『懐中時計』と『鋏』というものをご存知ですか?」
「ああ。どちらも見たことはある」
「実はこれらは、リゼラ様のご考案の下、創られたものなのです。私どもに製造販売を一任していただく代わりに、売り上げの一部をリゼラ様にお支払いしているのです」
この世界にも、以前から“時計”は一部に普及していたのだが、何故か木製のケースに収められたものしかなかった。
冒険者にも時計は意外と必要で、時計を持ち歩く冒険者も一定数いるけれど、いかんせん木製なもので壊れやすく、不経済な代物だったのだ。
その上かさばるから、物凄く不便だったので、前世で大叔父が持っていた懐中時計を思い出し、自分のために特注してみたのが最初の成り行きだ。
鋏の方も、孤児院で幼い子供たちがナイフを使うのが危なっかしくて、少しでも安全に出来ないものかと、特注したのが始まりだった。
どちらも、職人さんにイメージを伝えるのが難しく、最初の試作品が出来るまでが一番時間がかかった。試作品さえ出来てしまえば、後は早かった。
私の求めているものがどういうものか、職人さんたちも解ったようで、あっという間に売るに相応しい良品に仕上げてくれた。
冒険者ギルドと二大組織として肩を並べる“商人ギルド”には、前世のものと似た“特許制度”があり、私は勧められて、この『懐中時計』と『鋏』の特許を取得した。
正直、前世で存在したものを真似ただけなので罪悪感があるが────孤児院を買い取る資金が必要だったし、今も孤児院の経営に必要なので、目を瞑っている。
その代わり、『懐中時計』と『鋏』の売り上げは、孤児院のためにしか使わないと決めている。
「そうなのか。リゼは本当に多才だ
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