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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第九章―才能と価値―#4
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だけど…、もし、ここが皇妃に目をつけられてしまったら────
「この孤児院は…、リゼ、貴女が買い取ってくれてから────いえ、貴女が来るようになってから、とても良い方に変わりました」
院長先生が話し出したので、私は物思いを中断した。
「貴女は本当に皆のことを色々と考えてくれて…、冒険者になった子が簡単に死んでしまうようなこともなくなったし、貴女が文字や計算を皆に教え広めてくれたおかげで、仕事を見つけられる子が増えました。
ドライフルーツやあの黒ペンのこともそう。あれの作り方を貴女が教えてくれたから、お小遣い程度とはいえ幼い子たちも自分でお金を稼げるようになりました。
それに、貴女が作ってくれた紙やあの黒ペンを使って、文字や計算の練習が出来るようになりました」
院長先生はそこで言葉を切り、私の両手を握る。
「リゼ───貴女がいなければ、この孤児院はあの酷い状態のままだった。私は本当に貴女に感謝しているのです。いえ、私だけではありません。貴女のおかげで冒険者を続けられている子供たちも、仕事を見つけられた子供たちも、今ここで暮らす子供たちも、皆、貴女に感謝して────貴女を慕っています」
私の両手を握る院長先生の手に、力が籠められる。
「貴女は、やりたいようにやればいいのです。貴女がルガレド皇子殿下の親衛騎士に専念するのなら、助成金をもらう方が良いのでしょう?
そのことで、もし皇妃に目をつけられてしまうようなことになったなら、そのときは────私たちも一緒に立ち向かいましょう。だから…、一人で抱え込まないでください」
「院長先生……」
院長先生の手は皺だらけで、肉付きも薄くて、肌触りは良くないのに───とても温かくて、私は涙が出そうになった。
何度、この手に優しく頭を撫でてもらっただろう…。
その温もりと言葉に、私は心を決める。
この孤児院を所有していることを申請して、子供たちのために助成金をもらおう。
だけど、幼い私を救ってくれたこの場所を────この優しい人や、あの可愛い子供たちを────皇妃なんかに害させはしない。
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