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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第九章―才能と価値―#1
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 レナス、ジグ、レド様に、立て続けに強い口調で断言された。三人がそう言うからには、そのダブグレル伯爵は相当なのだろう。

 まあ、でも、自分から皇妃にすり寄っていったのなら、確かに自業自得かな…。

 レド様の親衛騎士になるにあたって、主だった貴族や関わり合いがありそうな貴族の情報は調べていた。

 ダブグレル伯爵は確か────伯爵位を継いだばかりのまだ年若い青年だったはず。

 割と整った顔立ちで、皇妃のお気に入りだと聞いていた。それが今は貶める対象になっているなんて、皇妃は本当に気まぐれのようだ。


◇◇◇


「この後はどうしましょうか?」

 中途半端に時間が空いてしまった。

「よろしければ、頼まれていた隠し通路の案内を致しましょうか?」

 ジグの願ってもない提案に、私はすぐさま頷く。

「お願いします」

「…俺も行ってもいいか?」
「そうですね。ルガレド様も把握しておいた方がよろしいでしょう」
「では、皆で参りましょうか」

 レド様、ジグとレナスが立ち上がる。

「あ、待ってください」

 私は【遠隔(リモート・)管理(コントロール)】で、筆記用具や地図、図鑑などを入れてあるトランクを取り寄せる。

「リゼ、それは何だ?」
「あ、これですか?」

 レド様は、私が筆記帖とともに取り出した筆記具───“墨果(ぼっか)筆”が気になったようだ。これは私が、前世の世界で使われていた“鉛筆”を元に考案したものだ。

「レド様は“墨果”という果実をご存知ですか?」

 レド様が首を横に振ると、レナスが口を挟んだ。

「魔物が住むような森によく生っているという、黒い果実のことですか?」
「ええ、それです」

 墨果は毒はないので食べることは出来るが、触感も悪く不味い上に口の中が黒くなるので、よほどの飢饉にでもならない限りは誰も食べない。

「実は、これ、その墨果を細く切って乾燥させたものなんです。そうすると、固くなって、まるで炭みたいになるので、私は何かを書き留めておきたいときなどに使っているんです。
強く擦ると滲んでしまうので、後でちゃんと書き写さないといけないんですけど、ペンにインクを付ける手間もいらないですし」

 本当は鉛筆のようにしたかったのだが難しくて────仕方がないので“パステル”のような形にして、持ち手部分に端切れを巻き、筆先をナイフで削って使っている。

「ほら、こんな風に書くことが出来るんです」

 私は皆に見えるように、筆記帖を開いて、空いたスペースに線を引く。

「これは…、リゼが考案したのか?」
「ええ。前世でこういう筆記具があって便利だったので、似たようなものを創りたいなと思っていて。以前、ドライ
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