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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第六章―約束―#1
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────泣きたくなんてないのに…。
 こんな姿、レド様だけには見られたくなかったのに────

「皆、理由があったことは解っているんです。でも…、私はどうしても、あの人たちを許せない───」

 涙が止まらなくて、それを隠すように両手で顔を覆う。

「リゼ、こっちを見ろ」

 泣いている顔を見られたくなかったけれど────私は反射的に顔を上げてしまった。

 いつの間にか、レド様が私の前に跪いて、私の顔を覗き込んでいる。
 レド様は眼帯を外して、あの不思議な色合いの左眼を晒していた。

「大丈夫だ。リゼは汚く濁ってなどいない。あのとき俺が魅かれた輝く光を纏ったままだ。
リゼ───相手に理由があったからって、許す必要などない。許せないからって、リゼが気に病む必要はないんだ」

 レド様が私を抱き寄せ、私は優しい温もりに包まれる。

「俺だって…、皇妃が許せない。母の命を奪い、爺様を死に追いやり、俺の眼を潰そうとした。本当は殺してやりたいくらい憎い。でも、あの女は殺したところで、死にゆく瞬間ですら、母を殺したことも爺様を死に追いやったことも、きっと後悔も反省もしない。だから、俺は諦めているだけなんだ。
だけど…、時々、無性に思い知らせてやりたくなる時がある。リゼは───こんな俺を汚く濁っていると思うか?」

 レド様の腕の中で、私は頭を横に振る。

「思いません────思うわけがありません。大事な人たちを殺されて、憎んでしまうのは当然です」
「俺だって同じだ。リゼが死ぬような目に遭わされて、それを許せないのは当然だし、俺はそれを汚く濁っているなどとは思わない」

 レド様の声音や私を大事そうに包んでくれる腕の温もりから、レド様が本当にそう思ってくれていることが判って────私はまた涙が出そうになる。


「…なあ、リゼ。どうしたら、お前は信じてくれる?妥協でもなく、買い被りでもなく、俺はただリゼがいいと───生涯を共にするならリゼがいいと思っていることを、どうしたら解ってくれる?」

「…っ私は───公爵家から除籍された身です。私ではレド様のお役には立てません…。レド様は…、後ろ盾になれる貴族家のご令嬢と婚姻すべきです…」

 本当は───嫌だ。レド様の隣にいるのは私でありたい。

 レド様といるのは本当に楽しくて───レド様の傍は本当に居心地が良くて、いつまでも、このまま二人でいられたら、と────そう思ってしまう。

 でも───それは叶わない。

 この国の第一皇子は生まれる直前に、前皇妃と共に弑逆されている。

 レド様は第二皇子ではあるけれど────実質的には現皇王陛下の第一子なのだ。今の異様な状況が正されれば、次期皇王となるべきお方だ。

 私ではその妃は───レ
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