暁 〜小説投稿サイト〜
コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第六章―約束―#1
[4/5]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
嫌だな────泣きたくなんてないのに…。
こんな姿、レド様だけには見られたくなかったのに────
「皆、理由があったことは解っているんです。でも…、私はどうしても、あの人たちを許せない───」
涙が止まらなくて、それを隠すように両手で顔を覆う。
「リゼ、こっちを見ろ」
泣いている顔を見られたくなかったけれど────私は反射的に顔を上げてしまった。
いつの間にか、レド様が私の前に跪いて、私の顔を覗き込んでいる。
レド様は眼帯を外して、あの不思議な色合いの左眼を晒していた。
「大丈夫だ。リゼは汚く濁ってなどいない。あのとき俺が魅かれた輝く光を纏ったままだ。
リゼ───相手に理由があったからって、許す必要などない。許せないからって、リゼが気に病む必要はないんだ」
レド様が私を抱き寄せ、私は優しい温もりに包まれる。
「俺だって…、皇妃が許せない。母の命を奪い、爺様を死に追いやり、俺の眼を潰そうとした。本当は殺してやりたいくらい憎い。でも、あの女は殺したところで、死にゆく瞬間ですら、母を殺したことも爺様を死に追いやったことも、きっと後悔も反省もしない。だから、俺は諦めているだけなんだ。
だけど…、時々、無性に思い知らせてやりたくなる時がある。リゼは───こんな俺を汚く濁っていると思うか?」
レド様の腕の中で、私は頭を横に振る。
「思いません────思うわけがありません。大事な人たちを奪われて、憎んでしまうのは当然です」
「俺だって同じだ。死ぬような目に遭わされて────存在を否定するような扱いをされて、リゼがそれを許せないのは当然だし、俺はそれを汚く濁っているなどとは思わない」
レド様の声音や私を大事そうに包んでくれる腕の温もりから、レド様が本当にそう思ってくれていることが判って────私はまた涙が出そうになる。
「なあ、リゼ。どうしたら、お前は信じてくれる?妥協でもなく、買い被りでもなく、俺はただリゼがいいと───生涯を共にするならリゼがいいと思っていることを、どうしたら解ってくれる?」
「…っ私は───公爵家から除籍された身です。私ではレド様のお役には立てません…。レド様は…、後ろ盾になれる貴族家のご令嬢と婚姻すべきです…」
本当は───嫌だ。レド様の隣にいるのは私でありたい。
レド様といるのは本当に楽しくて───レド様の傍は本当に居心地が良くて、いつまでも、このまま二人でいられたら、と────そう思ってしまう。
でも───それは叶わない。
この国の第一皇子は生まれる直前に、前皇妃と共に弑逆されている。
レド様は第二皇子ではあるけれど────実質的には現皇王陛下の第一子なのだ。今の異様な状況が正されれば、次期皇王と
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ