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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第六章―約束―#1
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子を立太子させようと画策しているらしいが、未だに成功していない。

 そもそも───あのおじ様が、いつまでもこの状況下で手を(こまね)いているはずがないのだ。

「おそらく、そう遠くない将来に、レド様はお立場を回復されます。だから…、だから───レド様は、私で妥協する必要はないんです……」

 レド様は、長らくこの異様な孤立した環境で過ごしていたから、私しか選択肢がないと錯覚しているのだと思う。

 親衛騎士としてだけなら、私でもいい。私の悪評は返って良い隠れ蓑になり、私の見えない後ろ盾はレド様の助けとなれる。

 だけど、妃は────私では駄目だ。

 この国は長らく実力主義だったこともあって、平民であっても皇子妃になることはできる。

 でも────後ろ盾がないレド様には、力ある婚家が必要なのだ。

 公爵家から除籍されて貴族社会での立場が弱く、悪評がついて回る私では、レド様の役には立てないし、ただ足を引っ張るだけだ。

「妥協とは、どういう意味だ?───俺が妥協して…、リゼを妻にするつもりだと───そう思っているのか?」

「レド様…?」

 レド様の声は、いつもの楽しそうなものからは程遠い、低く唸るようで、怒っているように聞こえた。

 そして、私を大切にしたいと言ってくれた、あの時と同じ───怖いくらいに真剣な表情で続ける。

「リゼは誤解している。おそらく、俺にはリゼしかいないから、リゼを妻にするつもりだと思っているのだろう?
確かに爺様が亡くなってからは、ずっと孤立させられていた。だが、16歳までは俺だって普通に社交界に出ていて、それなりに交流はあったし、孤立してからも皇妃の目を盗んで同情を寄せてくれる女性だっていた」

 それは当然だろう。皇妃が不当に貶めているだけで────レド様は素敵だもの…。

「その気持ちは嬉しかったが、それだけだ。今まで心惹かれる者はいなかった。いなかったんだ…、リゼに会うまでは────」

 私はレド様の言葉に驚いて、俯き加減だった顔を上げる。

「初めて会ったときのことを覚えているか?契約の儀のとき───控室から出て、俺が立ち止まってリゼを見ていたことを」

 私は頷く。立ち止まったレド様に気づいて、どうしたんだろうと不思議に思った。

「あのとき、俺は…、リゼに見惚れていたんだ。その長い黒髪も、澄んだ蒼い瞳も、凛とした立ち姿も、何もかもが綺麗で───そして、何より…、その身に纏う輝きが本当に綺麗で……」

「身に纏う、輝き…?」

「前に言っただろう、この左眼は人の性根を映し出すと。性根が醜いものは、汚く濁った靄を纏っているように見えるんだ。だけど…、リゼが纏っていたのは輝く光の粒で───あんなに綺麗な心根を見たのは初めて
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